(日銀)維持
日銀は、6月15~16日に開催した金融政策決定会合において、金融政策の維持を決定した。マネタリーベースが年80兆円に増加するペースで各種資産買入れと、日銀当座預金の一部に対する▲0.1%のマイナス金利適用を継続する。前回同様、資産買入れに対しては1名(木内委員)、マイナス金利に対しては2名(木内委員・佐藤委員)が反対票を投じた。
市場では、追加緩和見送りの発表を受けて、大幅な円高・株安が進行した。
声明文では、景気の総括判断を、「基調としては緩やかな回復を続けている」に据え置いた。個別項目では、住宅投資と公共投資の判断を上方修正した。先行きについては、景気・物価ともに回復に向かうとのシナリオは従来同様だが、物価については、「当面小幅のマイナスないし0%程度で推移する」(従来は「当面0%程度で推移する」)とやや下方修正。足下の物価下振れを反映した。
その後に行われた会見で、黒田総裁はマイナス金利の効果について、企業の前向きな設備投資スタンスと住宅投資の持ち直しを挙げ、「実体経済面にも徐々に波及してきており、今後、より明確になっていくのではないか」と前向きに評価した。急速に進む円高については、「金融政策自体が為替レートにリンクしていたりターゲットにしたりはしていない」と、円安誘導と受け取られないよう配慮しつつも、「こういった形で円高が進んでいることが、日本経済あるいは将来の物価上昇率に対して好ましくない影響を与えるおそれがある」とやや踏み込んだ発言をし、円高をけん制した。今後の追加緩和については、「必要になれば、「量」・「質」・「金利」の3つの次元を活用して躊躇なく追加的な緩和をとる用意がある」と従来同様の表現に留めた。なお、Brexitに関する表現が声明に見当たらないことに関しては、「"金融市場は世界的に不安定な動きが続いており"という中に読み込んで頂いたらと思っている」と説明した。
その後、6月24日に「金融政策決定会合における主な意見」(6月15~16日開催分)が公表され、同決定会合において、Brexitを警戒する意見が多数出ていたことが明らかになった。Brexitを見極める必要があることを追加緩和見送りの理由とする意見もみられた。
現在の金融緩和の枠組みについては、その持続性や信頼性、サプライズ重視の姿勢、ヘッジ付外債への資金流出など、問題点を指摘する意見が多数あった。非主流派からの意見と推測されるが、日銀内の意見の対立はさらに目立ってきている。
今後の金融政策に関しては、メインシナリオとして7月の追加緩和を予想している。マイナス金利の影響をある程度見極められるようになってくるうえ、年初から急激に進んでいる円高の影響などから物価の基調にも変調が出ており、下振れリスクも大きいためだ。また、7月の会合では展望レポートの公表が予定されているが、物価見通しの下方修正は避けられない情勢にある。
さらに、市場との関係の観点でも、最近は日銀の追加緩和見送りを受けて円高が進む傾向が強く(3回連続)、結果的に物価の押し下げに繋がっている面がある。7月は市場の緩和予想が集中しているだけに、ここで見送れば「動けない日銀」との印象から、大幅な円高が進む懸念がある。つまり、「緩和しないリスクが高い」ことも追加緩和に踏み切る材料になると見ている。
追加緩和手法は、ETF買入増額、マイナス金利拡大、地方債買入れ導入等を予想。マイナス金利での(銀行への)資金供給策導入も有り得る。現在、打てる手を全て投入してくると予想している。