利上げ接近、でも円安進行はまだ先か~マーケット・カルテ6月号

2016年05月23日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

ドル円相場は、5月上旬に一時105円台に突入したが、その後は円安ドル高が進み、足元では109円台後半で推移している。良好な米経済指標が続いたうえ、18日に公表された4月FOMC議事要旨を受けて、米国の6月利上げ観測が突如高まり、ドル高圧力が強まったためだ。

今後の最大の焦点は、「米国の早期利上げはあるのか?」となるが、7月に利上げに踏み切る可能性が高いとみている。市場の利上げ観測も徐々に高まっていくだろう。ただし、このことはそのまま円安ドル高基調になることを意味しない。米利上げは、人民元や原油相場の押し下げ圧力となる。中国不安や原油価格不安定化などによって市場で先行き懸念が再び台頭することで、リスク回避通貨である円への上昇圧力が一旦強まりそうだ。利上げは本来ドル高材料だが、リスク回避ムードが続くうちは円安に繋がりにくいため、3ヵ月後のドル円は現状と大差ない水準を予想する。円安ドル高基調への回帰はもう少し時間がかかりそうだ。なお、国内では物価の下振れリスクが高まっているため、日銀は6月にも追加緩和に踏み切ると予想するが、為替への効果は限定的に留まると見ている。

ユーロ円は、最近材料が乏しく、123円前後での推移が続いている。

今後3ヵ月は、対ユーロでもリスク回避の円高圧力が強まりやすい。一方で、6月下旬に行われる英国のEU離脱を問う国民投票において離脱が否決されることで、ユーロにも買い戻しの動きが出ると見込まれる。3ヵ月後のユーロ円は現状比横ばい圏内と予想している。
長期金利は、長らく-0.1%を挟んだ展開が続いている。ただし、今後、日銀が6月にもマイナス金利の拡大を伴う追加緩和に踏み切ることで、もう一段低下する可能性が高い。
 
(執筆時点:2016/5/23)

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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