2|ソルベンシー・マージン比率
BaFinのAnnual Report 2014によれば、全ての民間医療保険会社は、2014年12月31日時点のプロジェクションに基づいて、ソルベンシー資本要件に準拠している。医療保険部門の目標ソルベンシー・マージン比率は、約280%であり、前年度に報告された258%より高くなることが想定されている。
これにより、医療保険部門は、良好なレベルの自己資本を持ち続けている、とされている。
3|ストレステスト
42の民間医療保険会社が2014年度のストレステストに参加した。6つの民間医療保険会社はその投資リスクが低いことから、ストレステストへの参加を求められなかった。
ストレステストの結果、全ての民間医療保険会社は、大きな資産価額の損失や金利の上昇があっても、技術的準備金(老齢化積立金)や法定資本要件をカバーするのに十分な資産を有していることが確認された。
4|将来収支予測
老齢化積立金を設定する必要がない会社等を除く40の医療保険会社が、2014年9月30日の基準日時点の将来収支予測を行っている。これは、医療保険会社の低金利による中期的影響を調べることに焦点を当てて行われた。この目的のために、BaFinは、異なる不利な資本市場のシナリオの下で、2014年度と引き続く4年間において予測される収支状況に関するデータを収集した。 1つのシナリオでは、新規投資及び再投資は1.3%の金利を有する10年のファンドブリーフ債
13に対してのみ行われると仮定した。 2つめのシナリオでは、個々の医療保険会社の計画に基づいて、新規投資や再投資をシミュレーションしている。
当然のことながら、低金利シナリオは、再投資リスクの実現により、投資リターンのさらなる減少をもたらすことを示していたが、全体的な結論としては、低金利環境の継続に、経済的な観点からは、医療保険会社は耐えられるだろう、ということだった。ただし、保険料調整スキームの中で、段階的に割引率を低下させていく必要性を示唆した。
ただし、将来収支のベースとなった2014年9月30日時点以降に、金利はさらに低下していることから、この観点からは保険料調整の必要性等がより一層増大してきている状況にある、といえる。
5|ACIRP(AUZ-Verfahrens)の結果
ACIRP(actuarial corporate interest rate process)は、BaFinによる、「保険会社の数理計算上の割引率水準の妥当性をチェックするための、フォワード・ルッキングな予防的な監視ツール」である。保険会社は、毎年BaFinに数理計算上の割引率を提出しなければならない。これに基づいて、保険会社は、保険料を調整する時に、既存のタリフの割引率を引き下げる必要があるかどうかを決定することになる。
このプロセスでは、次の2会計年度において達成可能なリターンを予測する。資産ポートフォリオを既契約、新規投資、再投資に区分し、リスクも考慮して、それぞれから得られる投資収益を予測する。これによって得られるACIR(actuarial corporate interest rate)が3.5%より低い場合には、それがその会社の新しい最高割引率になる
14。
2014 年度のACIRP(2015年度の予測)では、36の保険会社が、将来の計算に使用される割引率が、要求される高度の確実性(90%)をもって達成可能なことを示すことができなかった。それゆえ、保険会社は、保険料の調整が行われる時には、タリフの割引率を引き下げるべきだということになっている
15。
各社のアクチュアリーが、ACIRガイドラインの中で明示的に触れられていないリスク等も考慮に入れるかどうかも検討して、割引率を決定する。どのようなアプローチに基づいて割引率を決定しているのかの理由は、計算を支える技術文書に分かりやすい方法で記載されなければならない。アクチュアリーは、「高齢の保険契約者に対する民間医療保険会社の保険料を、より安定的に維持するために、十分な超過利回りが確保される必要がある。」と述べられている前提等が遵守されていることを確認する必要がある。
13 住宅ローン債券等を裏付け資産とする担保付社債(カバードボンド:Covered Bond)で、金融機関によって発行されている。
14 この方式の採用により、2004年に生命保険の責任準備金評価用の最高予定利率が2.75%に引き下げられたにも関わらず、医療保険においては、2012年まで3.5%の水準が維持された。
15 医療保険の場合、(既契約も含めた)保険料の調整が行われる際には、割引率だけでなく、保険事故発生率や事業費率等の要素も含めて勘案されて、決定されることになる。
7―まとめ