消費者物価(全国16年2月)~全国のコアCPIは16年3月にマイナスへ

2016年03月25日

(斎藤 太郎) 日本経済

1.コアCPI上昇率は2ヵ月連続でゼロ%

総務省が3月25日に公表した消費者物価指数によると、16年2月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.0%(1月:同0.0%)となり、上昇率は前月と変わらなかった。事前の市場予想(QUICK集計:0.1%、当社予想は0.0%)を下回る結果であった。
食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合は前年比0.8%(1月:同0.7%)と上昇率が前月から0.1ポイント拡大、総合は前年比0.3%(1月:同0.0%)となった。
 
コアCPIの内訳をみると、ガソリン(1月:前年比▲16.7%→2月:同▲15.8%)、灯油(1月:前年比▲26.3%→2月:同▲25.4%)の下落幅は縮小したが、電気代(1月:前年比▲6.4%→2月:同▲7.6%)、ガス代(1月:前年比▲7.6%→2月:同▲8.3%)の下落幅が拡大したため、エネルギー価格の下落率は前年比▲10.9%となり、1月の同▲10.7%とほぼ変わらなかった。
また、円高の影響などから輸入物価ベースの食料品は前年比で大幅な下落となっているが、消費者物価の食料(生鮮食品を除く)は前年比2.1%(1月:同2.1%)と高止まりが続いている。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが▲1.00%(1月:▲0.99%)、食料(生鮮食品を除く)が0.48%(1月:0.48%)、その他が0.52%(1月:0.51%)であった。
 

2.物価上昇品目数の割合は引き続き6割を上回る

消費者物価指数の調査対象524品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、2月の上昇品目数は351品目(1月は338品目)、下落品目数は130品目(1月は131品目)となり、上昇品目数が前月から増加した。
上昇品目数の割合は67.0%(1月は64.5%)、下落品目数の割合は24.8%(1月は25.0%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は42.2%(1月は39.5%)であった。
コアCPI上昇率はゼロ近傍の推移が続いているが、品目数でみれば引き続き6割以上の品目が値上がりしており、物価上昇の裾野の広がりは維持されている。
 

3.全国コアCPIは16年秋頃までマイナスが続く公算

16年3月の東京都区部のコアCPIは前年比▲0.3%(2月:前年比▲0.1%)と3ヵ月連続の下落となり、下落率は前月から0.2ポイント拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:▲0.2%、当社予想も▲0.2%)を下回る結果であった。
電気代(2月:前年比▲11.8%→3月:同▲13.7%)、ガス代(2月:前年比▲15.3%→3月:同▲17.8%)、ガソリン(2月:前年比▲16.0%→3月:同▲21.6%)、灯油(2月:前年比▲17.0%→3月:同▲17.6%)の下落幅がいずれも拡大したため、エネルギー価格の下落率は2月の前年比▲13.5%から同▲16.0%へと拡大した。
東京都区部のコアCPI上昇率のうち、エネルギーによる寄与が▲1.08%(2月:▲0.90%)、食料(生鮮食品を除く)が0.39%(2月:0.43%)、その他が0.50%(2月:0.37%)であった。

原油価格(ドバイ)は1月中旬の1バレル=20ドル台半ばから足もとでは30ドル台後半まで持ち直しているが、電気代、ガス代は原油価格下落の影響が遅れて反映されるため、エネルギー価格の下落ペースは16年夏場にかけて加速することが見込まれる。また、エネルギー以外の物価上昇圧力は依然強いものの、年明け以降に進んだ円高に伴う輸入物価下落の影響で食料品やその他の上昇率も先行きは頭打ちとなる可能性が高い。
現時点では、全国のコアCPI上昇率は16年3月にマイナスに転じた後、秋頃までマイナス圏の推移が続くと予想している。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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