日銀短観(3月調査)予測~大企業製造業の業況判断D.I.は4ポイント低下の8を予想

2016年03月23日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

■要旨
  1. 3月調査短観では、注目度の高い大企業製造業で2四半期ぶりに景況感の悪化が示されると予想する。また、大企業非製造業の景況感も6四半期ぶりに悪化すると予想。最近の日本経済は停滞感が強まっている。10-12月期の日本経済は再びマイナス成長に陥ったうえ、その後に発表された1月以降の消費・生産といった経済指標も総じて冴えない。また、金融市場では、年明け以降に急激な円高・株安が進行した。とりわけ、製造業では海外経済の減速や急激な円高進行を受けて、景況感の悪化が鮮明になりそうだ。非製造業も国内消費の低迷がマインドの下方圧力となるが、好調な訪日外国人観光客の需要や、不動産業などに対するマイナス金利の恩恵が、下方圧力をある程度緩和するだろう。中小企業も大企業同様、製造業を中心に景況感の悪化が示されると予想している。
     
  2. 先行きの景況感も幅広く悪化しそうだ。中国経済の減速や米利上げの影響など、海外経済の先行き不透明感は強く、製造業の悲観に繋がるだろう。非製造業でも、中国経済の減速や円高によって訪日客需要が鈍化するリスクや、勢いを欠く賃上げ情勢が先行きへの懸念を高め、景況感を下押ししそうだ。
     
  3. 15年度設備投資計画は、前回調査から小幅に上方修正されると予想。例年、3月調査では中小企業で上方修正される傾向が強く、今回も大企業における下方修正の影響を穴埋めしそうだ。ただし、16年度については例年よりも弱気な計画が示されるだろう。現在は先行きの不透明感が強く、企業の様子見スタンスが強まっているとみられるためだ。
     
  4. 今回の短観で最も注目されるのが今回初めて公表される2016年度の事業計画となる。収益計画、設備投資計画に企業の悲観がどこまで織り込まれてくるかがポイントになる。

 
■目次

3月短観予測:海外経済減速・円高・消費の低迷が景況感を押し下げ
  ・先行きも悲観的に
  ・注目ポイント:来年度計画
  ・日銀金融政策:追加緩和に軸足を移す材料に

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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