これまで投資実績から算出した都市別不動産マーケットを見てきたが、実際の投資では、個別の物件によって、指数ベースのリターンを上回ることも下回ることもあり、優劣を見極めた物件選定が重要となる。機関投資家が投資する場合には、そうした見極めを自らのみで行う直接投資の他に、共同投資、セパレートアカウントによる運用委託、合同運用ファンドなどの形態がある。どの投資形態や投資対象地域を選定するかは、各投資家の運用体制や方針によるが、不動産取引額で上位に位置する政府系ファンド、大型年金基金、大手保険会社などは、直接投資や共同投資により多額の不動産投資を行っている。
その事例として、ノルウェー政府年金基金(以下、運用者の「NBIM(Norges Bank Investment Management)」と表記)、カナダ国民年金基金(同「CPPIB(Canada Pension Plan Investment Board)」)の米国でのオフィス投資物件の一覧を図表11に示した。主にニューヨーク、ワシントン、ボストン、サンフランシスコ、ロサンゼルスの中心地に所在する大型オフィスを対象としていることが分かる。
この他、物流施設については、NBIMは、運用会社1社との米国物流投資プログラムで、ニューヨーク、シリコンバレーなどの後背地で多数投資し(ニュージャージー州14棟、ペンシルベニア州11棟、カリフォルニア州23棟)、ワシントン州、イリノイ州などにも分散投資している。一方、CPPIBもカリフォルニアとニュージャージーで複数の物流施設に投資しているが、全米の物流ポートフォリオにもシェア11%で投資している(図表12)。