欧州の保険業界の代表的な意見は、「UFRは、少なくともソルベンシーIIの最初のレビューが行われる2018年まで変更されるべきでなく、仮に変更を行う場合でも、いかなる重要な変更も段階的に導入されなければならない。」というものである。以下に、その具体的な内容を紹介する。
1|現時点でUFR水準を見直すべきでない理由
以下のような理由から、少なくともソルベンシーIIの最初のレビューが行われる2018年まで、UFRを変更すべきでない。
(1)現在の低金利環境に照らして、UFR水準を引き下げるべきとの意見があるが、UFRは現在のレートではなく、最終的なフォワードレートであり、例えばユーロの場合、将来における60年目まで完全に適用されることはない水準であることを十分に理解しておく必要がある。
(2)ソルベンシーIIの委任法(Delegated Acts)では、UFRについて「長期間にわたって安定的であり、あくまでも長期の期待の変化の結果としてのみ、変更されるものでなければならない。」と述べている。そのため、UFR水準は、数年の期間にわたって安定的であるべきである。
(3)現在の金利水準が非常に低く、このような状況がさらに数年間続くかもしれないとも想定されているが、一方で現在のような状況が永久に続くと判断するのはあまりにも時期尚早である。
(4)オムニバスIIにおける全ての重要な技術的、政治的な決定は、長期保証措置を有するソルベンシーIIが意図したとおりにワークするかどうかについて、あくまでも4.2%のUFR水準を前提に行われている。
(5)実務上も、施行日直前の段階でUFRを変更することは、評価に用いられる主要なパラメータの不必要な不確実性を作り出し、ソルベンシーIIにビジネスモデルを適応させようとしている保険会社の動きを阻害することになる。
2|今後のUFRの見直しについての考え方
しかしながら、将来のレビューにおいて、UFR水準の設定方法、UFR変更のトリガーの考え方、変更する場合の適用方法等について、議論・研究する必要があることは十分に認識している。
ただし、この場合でも、現在のUFRの方法論の原則は維持されるべきである。さらには、UFRは、小さな変更でも、ソルベンシーIIの利用可能資本等を大きく変動させることになるので、その水準については、短期的な市場の動きに対応して決定するのではなく、将来に対する合理的で透明性がある安定的な前提に基づいて決定されるべきである。
3|UFRを変更する場合の対応について
UFRの影響と重要性を考えると、今後のUFRの変更については、パブリック・コンサルテーション等を経て、関係者からの意見や懸念を十分に踏まえた上で、行われるべきである。
また、実際に変更を行う場合には、保険会社に対して、十分な余裕を持って、事前に通知を行い、さらに、大きな影響が想定される重要な変更を行う場合には、数年間にわたって変更を適用する等の形で段階的に導入していく必要がある。