消費者物価(全国15年11月)~コアCPI上昇率は5ヵ月ぶりのプラス

2015年12月25日

(斎藤 太郎) 日本経済

1.コアCPI上昇率は5ヵ月ぶりのプラス

総務省が12月25日に公表した消費者物価指数によると、15年11月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.1%(10月:同▲0.1%)となり、5ヵ月ぶりのプラスとなった。事前の市場予想(QUICK集計:0.0%、当社予想も0.0%)を上回る結果であった。

食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合は前年比0.9%(10月:同0.7%)と上昇幅が拡大、総合は前年比0.3%(10月:同0.3%)となった。
 
コアCPIの内訳をみると、灯油(10月:前年比▲27.4%→11月:同▲27.4%)は前月と同じ下落幅となったが、電気代(10月:前年比▲5.7%→11月:同▲5.6%)、ガソリン(10月:前年比▲19.2%→11月:同▲17.5%)、ガス代(10月:前年比▲8.4%→11月:同▲8.1%)の下落幅が前月から縮小したため、エネルギー価格の下落率は前年比▲11.1%となり、10月の同▲11.8%から若干縮小した。
原材料価格上昇の影響などから値上げが続いている食料(生鮮食品を除く)が前年比2.3%(10月:同2.2%)と上昇ペースがさらに加速した。

また、電気冷蔵庫、ルームエアコンなどの家庭用耐久財(10月:前年比3.7%→11月:同4.8%)、テレビなどの教養娯楽用耐久財(10月:前年比13.3%→11月:同14.0%)、宿泊料などの教養娯楽サービス(10月:前年比0.7%→11月:同1.7%)の上昇率が高まったことがコアCPIを押し上げた。
 
コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが▲1.07%(10月:▲1.16%)、食料(生鮮食品を除く)が0.51%(10月:0.49%)、その他が0.66%(10月:0.57%)であった。

2.物価上昇品目数の割合は引き続き6割を上回る

消費者物価指数の調査対象524品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、11月の上昇品目数は347品目(10月は342品目)、下落品目数は132品目(10月は135品目)となり、上昇品目数が前月から増加した。

上昇品目数の割合は66.2%(10月は65.3%)、下落品目数の割合は25.2%(10月は25.8%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は41.0%(10月は39.5%)であった。

食料(生鮮食品を除く)は7割以上の品目が上昇し、特に値上がりが目立っているが、トイレットペーパー、ポリ袋などの日用品、宿泊料、テーマパーク入場料、月謝類などのサービスでも幅広い品目で値上げが行われている。
 

3.原油価格が上がらなければコアCPIは再びマイナスの可能性

15年12月の東京都区部のコアCPIは前年比0.1%(11月:前年比0.0%)と6ヵ月ぶりのプラスとなった。事前の市場予想(QUICK集計:0.1%、当社予想は0.0%)通りの結果であった。

エネルギー価格の下落率は前年比▲12.1%と11月の同▲12.4%からほぼ変わらなかったが、食料(生鮮食品を除く)の上昇ペースが11月の前年比1.7%から同2.2%へと加速したことがコアCPIを押し上げた。

東京都区部のコアCPI上昇率のうち、エネルギーによる寄与が▲0.81%(11月:▲0.84%)、食料(生鮮食品を除く)が0.47%(11月:0.37%)、その他が0.44%(11月:0.47%)であった。
 

エネルギー価格の前年比下落率は今後縮小し、コアCPI上昇率も徐々に伸びを高めることが見込まれる。現時点では原油価格(ドバイ)が16年3月に30ドル台半ば、16年6月に40ドル台前半まで上昇することを前提として、コアCPI上昇率はプラスを維持すると予想している。

ただし、原油価格(ドバイ)は1バレル=30ドル台前半まで下落しており、この水準が続けばエネルギー価格の下落率は3月頃から再び拡大することになる。原油価格が現状程度で推移した場合には16年度初め頃にコアCPI上昇率が再びマイナスとなる可能性があるだろう。
 

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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