【5月米雇用統計】雇用者数は28万人増。「量」だけでなく「質」の改善も伴った好結果。

2015年06月08日

(窪谷 浩) 米国経済

【要旨】

1.結果の概要:雇用者数の伸びは2ヵ月連続で20万人超

6月5日、米国労働省(BLS)は5月の雇用統計を公表した。5月の非農業部門雇用者数は前月対比で+28.0万人の増加(前月改定値:+22.1万人)となり、前月から伸びが大幅に加速、市場予想の+22.6万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)も大幅に上回った。
失業率は5.5%(前月:5.4%、市場予想:5.4%)と、こちらは前月から小幅上昇し、市場予想も上回った。一方、労働参加率は62.9%(前月:62.8%)と前月から0.1%上昇した(詳細はPDFを参照)。

2.結果の評価:労働市場の回復持続を確認

5月の雇用増が20万人台後半に加速したほか、後述のように不振だった3月の雇用増加数が上方修正された結果、直近3ヵ月の月間平均増加数は20.7万人となり再び20万人超のペースに復した。このため、3月の不振は悪天候などの一時的な要因による可能性が高まり、労働市場の回復基調に陰りがみられるのではとの懸念は払拭されたと言える。
失業率は、前月から小幅に上昇したが、中身をみると労働参加率の改善が示すとおり、労働力人口が力強く増加していることから心配はいらない。寧ろ、このことは職探しを諦めた人が労働市場の回復を背景に再び職探しをはじめた可能性を示唆しており、労働市場の「質」改善を示す良い兆候と考えて良いだろう。
さらに5月の時間当たり賃金は、24.96ドル(前月:24.88ドル)となり、前月比で+0.3%増加したほか、前年同月比でも+2.3%(前月:+2.2%)増加しており、4月から伸びが加速した。賃金の伸び加速も労働市場の「質」改善を示唆しており、非常に良い兆候だ。
このように、5月の雇用統計は雇用者数の増加ペースが加速し労働市場の「量」の改善がみられただけでなく、労働参加率の上昇や賃金上昇率の加速など、イエレン議長をはじめFRBが重要視する労働市場の「質」の改善もみられた。このため、FRBは政策金利引上げ開始の条件の一つとしている労働市場の「更なる改善」について自信を深めているだろう。4日に発表されたIMFの米国年次経済審査報告書では、政策金利の引上げを16年に先延ばしすることが政策提言された。しかし、今月の雇用統計によって年内の利上げの可能性が高まったとみられる。当研究所では利上げ開始時期を引き続き9月と予想している。




 
  1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
  2 労働参加率は、生産年齢人口(15歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。

経済研究部   主任研究員

窪谷 浩(くぼたに ひろし)

研究領域:経済

研究・専門分野
米国経済

経歴

【職歴】
 1991年 日本生命保険相互会社入社
 1999年 NLI International Inc.(米国)
 2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
 2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
 2014年10月より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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