経済研究部 准主任研究員
斉藤 誠(さいとう まこと)
研究領域:経済
研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済
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フィリピンの2015年1-3月期の実質GDP成長率は前年同期比+5.2%の増加となり、前期(同+6.9%)および市場予想(同+6.6%)を大きく下回った。民間部門は堅調を維持しているが、前期に好調だった輸出の鈍化や予算執行の遅れが景気の重石となった。
2015年予算では、歳出が前年比15.1%増加され、社会福祉やインフラ整備に割り当てられることで政府部門が経済成長を後押しすると思われた。しかし、「政府支出促進計画(DAP)」が昨年7月に最高裁判所の違憲判決を受けて以降、予算執行の遅れが続いている。1-3月期においても歳出は同+4.5%に止まり、政府部門は景気の下押し要因になった。実際、建設部門の粗付加価値額(GVA)の推移を見ると、民間部門が好調を維持する一方で公共部門がマイナスに転じており、公共事業の遅れが目立つ。
一方、民間部門は、GDPの7割を占める個人消費を中心に堅調に推移している。個人消費は資源価格の下落を背景とした足元の低インフレ環境が消費の押上げ要因になった。なお、1-3月における送金額の鈍化は、台風ヨランダ被害によって前年の送金額が大きかったためであり、拡大基調は失われていない。また今後は送金全体の4割強を占める米国の景気回復や原油価格の底入れで回復する中東からの送金額が拡大するなか、個人消費は堅調を維持するものと見られる。
今後、新興国経済の鈍化を受けた輸出の伸び悩みや予算執行の遅れが続くと、政府目標の7-8%の成長はおろか、更なる景気減速に対する懸念が高まり、中央銀行が利下げに踏み切ることも予想される。4月の消費者物価指数は前年比2.2%とインフレ目標(3±1%)の下限に近づいており、利下げ余地は十分に残されている。しかし、先行きの物価はエルニーニョ現象による農業被害や電力不足による電力料金の引き上げ、9月以降は資源安の一巡など上昇要因が控えていることから、金融政策の見直しは慎重に判断すると見られる。
経済研究部 准主任研究員
研究領域:経済
研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済
【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職