ドル円、膠着を脱するか?~マーケット・カルテ6月号

基礎研REPORT(冊子版) 2015年6月号

2015年05月20日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

ドル円相場は足元で120円台後半とやや上昇しているが、依然膠着状態を脱していない。最近発表された4月分の米経済指標には冴えないものも多く、米利上げ観測が盛り上がらず、ドル高のエネルギーが不足している。日本側にも目下大きな円安エンジンは見当たらない。

今後も米経済が鍵となるが、底流にある雇用・所得環境は悪くないことから遠からず持ち直すと見ている。米利上げが再び意識されるようになることで、今後3ヵ月の方向性は円安ドル高との見通しを維持する。ただし、今回の利上げペースは緩やかと予想されるほか、急ピッチのドル高は、米経済や企業収益への懸念を生むことで、それ自体がドル売り材料になるため正当化されない。3ヵ月後は現状比で小幅のドル高に留まりそうだ。なお、日銀の追加緩和については、米国議会を刺激するリスクがあるためTPP交渉が山場を越えるまでは難しい。交渉が遅れているため、従来の7月から10月へと予想を変更する。

ユーロ円相場は、ユーロ圏のデフレ懸念後退に伴うユーロの買戻しにより、4月終盤以降大幅なユーロ高となったが、行き過ぎ感がある。今後は欧州金利が落ち着き、低下に向かうと予想されるため、再びややユーロ安方向に動くと見ている。

長期金利は海外金利に揺さ振られ、方向感を欠く展開が続いている。今後は米金利の上昇が金利上昇圧力となるが、日銀が買い入れを続ける中で債券需給は基本的にタイトであり、金利上昇局面では投資家の買いが入りやすい。3ヵ月後は現状比横ばい圏内と見ている。

(執筆時点:2015/5/20)

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

レポートについてお問い合わせ
(取材・講演依頼)