経済研究部 主任研究員
窪谷 浩(くぼたに ひろし)
研究領域:経済
研究・専門分野
米国経済
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【要旨】
1.結果の概要:雇用者数の伸びは前月から大幅に加速
5月8日、米国労働省(BLS)は4月の雇用統計を公表した。4月の非農業部門雇用者数は前月対比で+22.3万人の増加1(前月改定値:+8.5万人)となり、市場予想の+22.8万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)は僅かに下回ったものの、前月から伸びが大幅に加速した。
一方、失業率は5.4%(前月:5.5%、市場予想:5.4%)と、こちらは前月から低下し、市場予想に一致した(後掲図表5参照)。また、労働参加率2は62.8%(前月:62.7%)と前月から0.1%上昇した(詳細はPDFを参照)。
2.結果の評価:雇用者数の増加ペースが再び20万人超を上回り景気減速懸念は後退
4月の雇用統計は、雇用増加ペースが大幅に鈍化した3月が、天候悪化などの一時的な要因によるものなのか、米国の景気回復が変調しているか見極める上で注目されていた。
4月の雇用増が再び20万人超のペースに復したことで、3月の雇用増ペースの鈍化が天候要因などの一時的な要因に影響された可能性が高まった。1-3月期の実質GDP成長率はほぼゼロ近辺まで低下したが、4-6月期には再び成長の加速が期待できる結果だと言えよう。もっとも、後述のように元々弱かった3月の雇用増加ペースが更に下方修正されたこともあり、4月の増加ペースは手放しで評価できる水準とは言えず、今後の雇用統計を引き続き注視する必要がある。
失業率は前月から低下した。通常の失業率に加え、より失業率の実態を反映する広義の失業率も低下基調が続いており、失業率は改善基調が持続しているとみられる。
FRBが労働市場の緩みを判断する上で注目している労働参加率は62.8%と前月から小幅ながら上昇した。もっとも、労働参加率は14年4月以降、概ね62.7%~62.9%の狭いレンジでの動きが持続しており、労働参加率の改善は足踏み状態が続いている。
最後に4月の時間当たり賃金は、24.87ドル(前月:24.84ドル)となり、前月比で+0.1%増加したほか、前年同月比でも+2.2%(前月:+2.1%)増加しており、3月から小幅ながら伸びが加速した。
もっとも、時間当たり賃金は、依然として前年同月比で2%近辺での推移が持続しており、賃金上昇率の明確な加速はみられていない。
このように、雇用統計は大幅に悪化した3月からは、全般的に改善したため、労働市場は引き続き改善基調が持続していると判断できる。
もっとも、4月の雇用統計はFRBが6月に政策金利を引上げられるほどの改善を示していないとみられることから、FRBの6月利上げの可能性はほぼ消滅したと言える。
経済研究部 主任研究員
研究領域:経済
研究・専門分野
米国経済
【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員