経済研究部 主任研究員
窪谷 浩(くぼたに ひろし)
研究領域:経済
研究・専門分野
米国経済
関連カテゴリ
【要旨】
結果の概要:成長率は大幅低下
4月29日、米商務省の経済分析局(BEA)は1-3月期のGDP統計(1次速報値)を公表した。1-3月期の実質GDP成長率は、季節調整済の前期比年率1で+0.2%となり、10-12月期改定値(同+2.2%)から低下し、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の同+1.0%も大幅に下回った。
1-3月期のGDP成長率を需要項目別にみると、個人消費や住宅投資の伸びが鈍化したほか、民間設備投資や純輸出が景気の足を引っ張った。
内需のうち、個人消費は前期比年率+1.9%(前期:同+4.4%)と、市場予想(同+1.7%)は僅かに上回ったものの、好調だった前期からは伸びが大幅に鈍化した。また、住宅投資も前期比年率+1.3%(前期:同+3.8%)と前期から伸びが鈍化した。さらに、設備投資は前期比年率▲3.4%(前期:同+4.7%)となり、11年1-3月期以来のマイナスに転じた。一方、政府支出は前期比年率▲0.8%(前期:▲1.9%)と2四半期連続のマイナス成長となった。在庫変動は、1-3月期の成長率寄与度が+0.74%ポイント(前期:同▲0.10%ポイント)となり、成長率を大幅に押し上げる方向に働いた。在庫変動の押し上げが無ければ今期はマイナス成長となっていたことが分かる。
外需では、輸出が前期比年率▲7.2%(前期:同+4.5%)と大幅なマイナスに転じた一方、輸入は同+1.8%(前期:同+10.4%)と前期からは伸びが鈍化したもののプラスを維持した。その結果、1-3月期は、純輸出(輸出―輸入)の成長率寄与度が▲1.25%ポイント(前期:同▲1.03%)と、成長率の押し下げ幅がさらに拡大した。
以上のように、1-3月期の成長率は10-12月期から大幅に低下した。労働市場の改善が持続する中で労働者の所得環境も良くなっており、今期の個人消費の伸び鈍化には2月を中心とした厳寒の影響がでたとみられるほか、輸出の大幅な落ち込みはドル高の影響だけでなく2月下旬まで継続した西海岸の港湾ストライキなどの一時的な要因が影響していると思われる。もっとも、それを抜きにしても、今期の成長率が在庫投資によって大幅に底上げされていることを考慮すれば、4-6月期以降に力強い成長経路に本当に回帰できるのか疑問を抱かざるを得ない内容だったと言える。今回の結果を受けて、FRBの金融政策における意思決定は益々難しくなっただろう。
経済研究部 主任研究員
研究領域:経済
研究・専門分野
米国経済
【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員