【アジア・新興国】中国保険市場の最新動向(13)ネット人口、世界最多の6.5億人-ネット専業の保険会社誕生

2015年04月21日

(片山 ゆき) 中国・アジア保険事情

■要旨

中国のインターネットユーザー数は2014年末時点で6億4900万人。ネット人口の規模では世界最大である。ネットユーザーの年齢構成をみると、20~29歳(31.5%)が牽引している。彼らはIT環境の中で育ったデジタルネイティブだ。
増加するネットユーザーは、スマートフォンなどの移動端末を介してインターネットにアクセスするケースが最も多い(64.1%)。スマホユーザーは2015年中には5億人を超えるとされており、ネットユーザーの規模全体を大きく押し上げている状況だ。
このようなインターネットやスマホなどの急速な普及の波は、銀行や保険といった金融事業にも押し寄せている。

中国において、オンラインの金融商品やネット保険といった新たな金融サービスの導入が進んだのは2013年である。これら金融商品の担い手は銀行などの金融機関ではなく、アリババといった通販大手やテンセントなどのIT企業という特徴がある。
アリババが提供するオンライン資産運用商品「余額宝」は、1口1元から投資が可能で、ターゲットはネットユーザーの若者やこれまで高額な理財商品などに手がでなかった所得層だ。支払いは手元のスマホでオンライン決済が可能である。

2013年にはネット専業の損害保険会社である衆安保険が設立されている。同社は、アリババが19.9%を出資し、競合であるテンセントが15%を出資するなど、競合同士が手を組んでいる。これに中国第2位の保険会社である中国平安保険が加わり、保険事業の経営ノウハウや専門技術を提供する役割を担う。衆安保険も余額宝と同様の顧客層に狙いを定め、保障内容や年齢対象をしぼった低価格帯の保険商品を販売する戦略だ。

直近の2014年のネット保険の収入保険料(生損保合計)は、前年比3倍の859億元(約1兆7000億円)となった。その成長は20%ともされる同年のE-コマース市場全体の成長率を遙かに凌ぐ勢いである。また、ネット保険が保険市場全体に占める割合は2013年の1.7%から4.2%に上昇した。2017年にネット保険は3000億元規模、全体に占める割合は9.5%に達するといった推計もあり、保険市場の成長に大きく寄与することが期待されている。

李克強総理が3月の全人代において「インターネット+」として、インターネットと既存の事業、産業の連携を国としても後押しする体制をとるとしており、今後も市場の拡大が期待される。

保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

片山 ゆき(かたやま ゆき)

研究領域:保険

研究・専門分野
中国の社会保障制度・民間保険

経歴

【職歴】
 2005年 ニッセイ基礎研究所(2022年7月より現職)
 (2023年 東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程修了) 【社外委員等】
 ・日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
 (2019年度・2020年度・2023年度)
 ・生命保険経営学会 編集委員・海外ニュース委員
 ・千葉大学客員准教授(2023年度~) 【加入団体等】
 日本保険学会、社会政策学会、他
 博士(学術)

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