法人企業統計14年10-12月期~企業収益好調も、設備投資、人件費の抑制姿勢は変わらず

2015年03月02日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・製造業の経常利益(季節調整値)が過去最高
・設備投資、人件費の抑制姿勢変わらず
・10-12月期・GDP2次速報は1次速報とほぼ変わらず

■要旨

財務省が3月2日に公表した法人企業統計によると、14年10-12月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比11.6%と12四半期連続の増加となり、7-9月期の同7.6%から伸びを高めた。非製造業が前年比8.4%(7-9月期:同1.4%)と伸びを高めたことに加え、製造業が前年比16.4%と7-9月期(同19.2%)に続き二桁増益となった。売上高は7-9月期の前年比2.9%から同2.4%へと伸びが鈍化したが、原油安の影響などから売上高経常利益率が13年10-12月期の4.9%から5.3%へと改善したことが収益を押し上げた。
季節調整済の経常利益は前期比10.0%(7-9月期:1.3%)と2四半期連続で増加した。経常利益(季節調整値)は非製造業が13年度中にリーマン・ショック前の水準を上回る一方、輸出の伸び悩みなどから製造業はリーマン・ショック前の水準を下回っていた。しかし、円安基調の継続や輸出の持ち直しを受けて14年下期に急回復し、リーマン・ショック前のピークを上回り過去最高水準となった。

設備投資(ソフトウェアを含む)は前年比2.8%と7四半期連続で増加したが、7-9月期の同5.5%からは伸びが鈍化した。季節調整済の設備投資(ソフトウェアを除く)は前期比0.6%(7-9月期:同3.0%)と2四半期連続の増加となったが、経常利益の伸びが大きく高まっているのとは対照的に伸び率は大きく鈍化した。製造業は前期比1.8%(7-9月期:同10.1%)と増加を維持したが、非製造業が同▲0.1%(7-9月期:同▲0.5%)と小幅ながら2四半期連続の減少となった。
企業収益は消費増税後も好調を維持しているが、設備投資は依然として力強さに欠けるものとなっている。また、政府による賃上げ要請の効果もあって14年度に入り一定の賃上げが実施されたが、人件費の伸びは14年7-9月期が前年比1.7%、10-12月期が同1.0%と緩やかなものにとどまっている。14年10-12月期の労働分配率(当研究所による季節調整値)は60.4%と90年代初頭の水準まで低下した。特に、製造業の労働分配率は54.8%と80年以降では最も低い水準となっている。企業収益が好調を続けているにもかかわらず、企業の設備投資、人件費の抑制姿勢はあまり変わっていない。

本日の法人企業統計の結果等を受けて、3/9公表予定の14年10-12月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.5%(年率2.2%)と1次速報の前期比0.6%(年率2.2%)とほぼ変わらないと予測する。設備投資が前期比0.1%から同0.4%へ上方修正される一方、民間在庫が前期比・寄与度0.2%から同0.1%へ下方修正されるだろう。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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