円安シナリオの前提に変化あり~金融市場の動き(2月号)

2015年02月06日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

  1. (為替) ドル円レートは120円をかなり割り込んだ状態が継続。原油安などを原因とするリスク回避の円買いが発生しているうえ、これまで円安シナリオを支えてきた前提である「日米金融政策の違い」と「日本の巨額の貿易赤字」に変化が起きているためだ。前者については、原油安の影響で米国の物価上昇が鈍化、これを一因として利上げ観測が後ずれしている。また、後者に関しては、原油安が反映されてきたことで貿易赤字が大幅に縮小しており、今後も急速に縮小していく可能性が高い。このように、原油安が円安ドル高を阻む要因になっているため、今後のドル円相場を占ううえで原油価格の動向が大きな焦点となる。原油価格がトレンドとして持ち直すためには、「需給の改善が近い」という市場の共通認識が必要になるが、4月頃になれば、先行きの需給改善が具体的に見えてくることで、持ち直し傾向が出ると見ている。原油価格の持ち直しはリスク回避地合いの緩和に繋がる。さらに、この頃には原油安のメリットが米経済にはっきりと出てくることで、利上げが近づいているとの認識が強まるだろう。一方で日本では追加緩和観測が台頭することが予想され、円安シナリオの前提のうち、「日米金融政策の違い」が再び鮮明化、ドル円は再び上昇に向かうと予想する。
  2. (日銀金融政策) 日銀は1月の決定会合で現行の金融政策を維持した。展望リポートでは15年度の物価見通しを下方修正。会見では「2015年度を中心とする期間に物価上昇率が2%に達する」との見通しを維持したものの、16年度入りする可能性も認めた。
  3. (金融市場の動き) 1月は円高ドル安、ユーロは急落、長期金利は過去最低を更新した。今後もリスク回避地合いが続くため、当面のドル円は上値の重い展開を予想。ユーロドルはやや下落、不安定化している長期金利は0.3%強を中心とする推移を予想している。

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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