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ブラジルGDP(2025年4-6月期)-内需は弱く、輸出も減速

2025年09月03日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:前期比0.4%に低下、前年比は2.2%

9月2日、ブラジル地理統計院(IBGE)は国内総生産(GDP)を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【実質GDP成長率(2025年4-6月期)】
前年同期比伸び率(未季節調整値)は2.2%、市場予想1(2.2%)と一致、前期(2.9%)から低下した(図表1・2)。
前期比伸び率(季節調整値)は0.4%、予想(0.3%)を上回ったが、前期(1.3%)から減速した

 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:個人消費と輸出が減速、投資はマイナス成長

25年4-6月期の実質GDP伸び率は前期比0.4%(季節調整値、年率換算1.5%)となり、前期(前期比1.3%、年率換算5.3%)から減速した。コロナ禍前(19年10-12月期)比では13.0%だった(図表4・5)。また、伸びのトレンドが掴みやすい前年比では2.2%と、1-3月期(2.9%)から伸び率が低下し、潜在成長率と見られる2%台半ばをやや下回った。

成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費が0.5%(前期:1.0%)、政府消費が▲0.6%(前期:0.0%)、投資が▲2.2%(前期:3.2%)、輸出が0.7%(前期:3.1%)、輸入が▲2.9%(前期:5.5%)となった。個人消費と輸出が減速し、投資はマイナス成長に転じている。

コロナ禍前との対比では、個人消費が11.6%、政府消費が8.7%、投資が22.7%、輸出が22.5%、輸入が25.0%だった(図表4)。
産業分類別に実質GDPの伸び率を見ると(図表3・5)、第一次産業は前期比▲0.1%(前期:12.3%)、第二次産業は同0.5%(前期:▲0.0%)、第三次産業は同0.6%(前期:0.4%)だった。第一次産業は前期に大幅に伸びた後、今期はほぼ同水準を維持している(図表5)。一方、第二次産業と第三次産業はプラス成長を維持した。

より細かい業種では、第二次産業の製造業(前期比▲0.5%)、建設業(同▲0.2%)が2四半期連続のマイナスとなった。高めの金利が維持されていることが成長の重しになっていると見られる。一方、第二次産業の鉱業(同5.4%)、第三次産業の金融(同2.1%)、情報・通信(同1.2%)が高めの伸びを記録した(図表3)。
4-6月期の名目成長率は前年同期比8.7%(前期:9.7%)に低下した。名目と実質成長率の差(デフレータに相当)は6.5%(前期:6.7%)とやや低下したが高めの水準が維持されている。なお、消費者物価指数(IPCA)上昇率は7月まで10か月連続で超過している。ブラジル中銀は6月会合まで7会合連続となる利上げを実施した後、前回8月会合では据え置きを決定し、政策金利をコロナ禍以降の最高水準(15%)で維持している。

輸出デフレータと輸入デフレータはいずれも前年比で伸び率が低下、輸入物価の伸びが輸出物価を上回ったため、交易利得は前期に比べて縮小した(図表6)。

経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

 ・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
  アドバイザー(2024年4月~)

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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