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ロシアの物価状況(25年9月)-低下が続くが、足もとインフレ圧力の強まりも

2025年10月14日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:前年比で総合指数、コア指数のいずれも低下

10月11日、ロシア連邦統計局は消費者物価指数を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数(25年9月)】
前年同月比は7.98%、市場予想1(8.00%)とほぼ一致、前月(8.14%)から低下した(図表1)
前月比は0.34%、市場予想(0.30%)とほぼ一致、前月(▲0.40%)からプラスに転じた。

【コア指数2(25年9月)】
前年同月比は7.65%、前月(8.04%)から低下した(図表2)
前月比は0.39%、前月(0.14%)から加速した

 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 生鮮食品など季節的要因による影響を受ける品目や管理品目を除いた指数。

2.結果の詳細:前週比ではインフレ率が再び上昇基調に

9月のロシアのインフレ率は前年比で7.98%となり、8月(8.14%)から低下した。3月(10.34%)をピークに6か月連続で低下している。

インフレ率を大分類別に見ると、9月の前年比伸び率は食料品が9.46%(前月:9.79%)、財(非食料品)が3.85%(前月:3.87%)、サービスが11.09%(前月:11.14%)となり、いずれの大分類でも低下した。すべての大分類が低下するのは5か月連続となる。

前年比寄与度では食料品が3.7%ポイント程度、財(非食料品)が1.3%ポイント程度、サービスが3.1%ポイント程度と見られる(図表1)。

9月の前月比伸び率は、総合指数で0.34%(前月:▲0.40%)、コア指数で0.39%(前月:0.14%)といずれも上昇した。ただし、総合指数はコロナ禍前の標準的な上昇率程度、コア指数はコロナ禍前の標準的な上昇率をやや上回る程度にとどまる(2018年の前月比伸び率は平均で総合指数が約0.35%、コア指数が約0.30%、図表3)。

前月比伸び率を大分類で見ると食料品が0.03%(前月:▲0.91%)、財(非食料品)が0.59%(前月:0.42%)、サービスが0.47%(前月:▲0.62%)となった。9月はすべての大分類で伸び率が上昇した(食料品とサービスはマイナスからプラスに転じた)。

別途、ロシア連邦統計局が公表している週次のインフレ率(消費者物価上昇率)を見ると、最新の10月6日時点の前週比で0.23%となり、物価上昇圧力が再び強まっている(図表4)。
ロシア中央銀行が公表する家計のインフレ期待(1年先中央値、実際のインフレ率よりも高めになる傾向がある)は、9月は12.6%で8月(13.5%)から低下した。なお、過去の傾向(期待インフレ率≒前年比インフレ率+6%、図表5)と比較すると、これまで実際のインフレ率と期待インフレ率の乖離が目立っていたが、足もとでは乖離が縮小している。
品目別の上昇率を見ると3(図表6)、9月は前年比で魚・海鮮(18.98%)、文化サービス(15.51%)、バター(13.76%)、乳製品(13.38%)、住居・公益サービス(13.19%)の伸び率が高い一方、卵(▲18.63%)、テレビ(▲7.85%)などは前年比で大幅マイナスとなった。また、前月比では、教育サービス(8.57%)、海外旅行サービス(5.49%)、卵(4.37%)の上昇率が相対的に大きい一方、青果物(▲3.49%)、旅客サービス(▲1.35%)の下落幅が大きかった。
各品目の消費ウエイトも考慮して、全体のインフレ率への寄与を品目別に見ると(図表7・8)、前年比上昇率への寄与が大きい品目は住居・公益サービス(1.32%ポイント)、家庭サービス(0.59%ポイント、下落率への寄与が大きい品目は卵(▲0.11%ポイント)だった。

前月比上昇率の寄与では、ガソリン(約0.11%ポイント)、教育サービス(約0.11%ポイント)のプラス寄与が相対的に高い一方、青果物(約▲0.18%ポイント)、その他サービス(約▲0.08%ポイント)はマイナス寄与が大きくなっている。
なお、現時点において統計局ウェブサイトで公表されていない品目も含む8月の上昇率寄与は図表9・10の通りとなった。
 
3 大分類である食料品、財(非食料品)、サービスをそれぞれ細目別に分類したもの(中分類)のうち、統計局のウェブサイトで公表しているものを記載。健康増進サービスおよび残差から算出されたその他サービスは前月比のみ。

経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

 ・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
  アドバイザー(2024年4月~)

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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