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ユーロ圏消費者物価(25年9月)-概ね物価目標に沿った推移が継続

2025年10月02日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:総合指数が上昇、コア指数は横ばい

10月1日、欧州委員会統計局(Eurostat)は9月のユーロ圏のHICP(Harmonized Indices of Consumer Prices:EU基準の消費者物価指数)速報値を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数】
前年同月比は2.2%、市場予想1(2.2%)と一致、前月(2.0%)から上昇した(図表1)
前月比は0.1%、予想(0.1%)と一致、前月(0.1%)と同じだった

【総合指数からエネルギーと飲食料を除いた指数2
前年同月比は2.3%、予想(2.3%)と一致、前月(2.3%)と同じだった(図表2)
前月比は0.1%、前月(0.3%)から低下した

 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 日本の消費者物価指数のコアコアCPI、米国の消費者物価指数のコアCPIに相当するもの。ただし、ユーロ圏の指数はアルコール飲料も除いており、日本のコアコアCPIや米国のコアCPIとは若干定義が異なる。

2.結果の詳細:2%物価目標と整合的な推移であることは変わらず

9月のHICP上昇率3(前年同月比)は全体で2.2%となり、8月(2.0%)から上昇したが、概ねECBの2%物価目標に沿った水準で推移している。「コア部分(=エネルギーと飲食料を除く総合)」は2.3%と8月(2.3%)から横ばい推移となった。

以下、詳細を「コア部分」「エネルギー」「飲食料(アルコール含む)」の3つに分けて見ていく。

まず、コア部分である「エネルギーと飲食料を除く総合」の内訳を見ると、「エネルギーを除く財(飲食料も除く)」が7月0.8%→8月0.8%→9月0.8%、「サービス」(エネルギーを除く)が7月3.2%→8月3.1%→9月3.2%となり、財インフレ、サービスインフレともに概ね横ばいでの推移が続いている。前年同月比寄与度は、「財」が0.18%ポイント程度、「サービス」が1.41%ポイント程度と見られる。コア部分では総じて横ばい圏の動きが続いている。

コア以外の部分では「エネルギー」が前年同月比で7月▲2.4%→8月▲2.0%→9月▲0.4%となり、マイナス幅が大幅に縮小した。エネルギーの前年同月比寄与度は▲0.05%ポイント程度(8月は▲0.19%ポイント)で8月の総合指数伸び率の上昇は、エネルギー伸び率のマイナス幅が縮小したことが主因と言える(前掲図表2)。
「飲食料(アルコール含む)」は、前年同月比で3.0%(8月3.2%)と低下(図表3)、内訳を見ると、飲食料のうち加工食品の伸び率は2.6%(8月2.6%)と横ばい、未加工食品は4.7%(8月5.5%)と低下した。

物価上昇の勢いをECBが公表する季節調整済系列で確認すると(図表4)、3か月移動平均後の3か月前比年率で総合指数が2.5%(8月2.0%)、コアが2.3%(8月2.4%)、エネルギーを除く財が1.5%(8月1.1%)、サービスが2.8%(8月3.0%)、飲食料が3.6%(8月3.4%)となった。飲食料インフレの物価上昇の勢いがやや強めだが、総合指数やコアの物価上昇の勢いは概ね2%目標と整合的な水準で推移している。
国別のHICP上昇率は、前年同月比で20か国中、上昇したのは12か国、残りの8か国は低下した(図表5)。また、物価目標の2%以下となったのは5か国だった。前月比では20か国中10か国がプラス、10か国がマイナスの伸び率となった(図表6)。
 
3 23年からはユーロ圏20か国のデータ、22年までは19か国のデータ(以降も特に断りがない限り同様)。

経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

 ・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
  アドバイザー(2024年4月~)

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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