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揺れるドル円、日米金融政策と政治リスクの狭間で~マーケット・カルテ10月号

2025年09月22日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

月初、1ドル147円台前半でスタートしたドル円は、日本の政治の不透明感が強まったことによる日銀利上げ観測の後退を受けて、3日に148円台後半に下落した。その後は低調な雇用統計等を受けた米国の早期利下げ観測によるドル売りと、石破首相辞任表明を受けた円売りが交錯したが、米利下げ観測の影響が優勢となったことで、17日には146円台半ばを付けた。同日のFOMCでは利下げが決定されたが、パウエル議長が先行きの利下げについて慎重姿勢を示したことでドル高に振れた。一方、直後の金融政策決定会合(MPM)において、日銀がETFの売却を決めたほか、利上げを主張する委員が2名現れたことが円の一定の支えとなり、足元では148円台前半で推移している。

FRBの今後の利下げペースは経済指標次第だが、関税の影響等によって米経済の減速感が強まり、FRBが年内に追加利下げに踏み切ることがドル安圧力になるだろう。また、トランプ大統領の腹心であるミラン氏がFRB理事に就任し、今後は外部に加え内部からFRBの独立性に対する圧力がかかることもドル売り材料となりそうだ。一方、日銀の利上げは来年1月とみているが、早期利上げ観測が燻ることが円高に寄与する。従って、今後3カ月の方向感としては円高ドル安と見ている。ただし、国内で10月に発足する次期政権は少数与党体制の下で政権運営が不安定となり、財政政策が拡張的になりやすいため、円を積極的に買いづらい面は残る。このため、3カ月後の水準は、現在より小幅な円高に留まり、145円前後になると見込んでいる。

月初1.6%台前半でスタートした長期金利は、足元では1.6%台半ばで推移している。利下げ観測に伴う米長期金利低下が抑制要因となり、上旬に一旦1.5%台半ばへ低下したものの、その後は日銀による早期利上げ観測の高まりを受けて持ち直した。

日本国債を積極的に買う材料は乏しく、今後も財政政策の拡張観測や日銀による利上げ観測等を背景として、金利上昇圧力が燻る地合いになりそうだ。3か月後の水準は1.7%前後と見込んでいる。
 
(執筆時点:2025/9/22)

経済研究部   主席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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