中村 亮一()
研究領域:保険
研究・専門分野
E.3.5内部モデルとグループSCRモデルのリスク領域で使用される手法と前提の主要な差異の説明
ソルベンシーPICMと標準式の方法論と前提の主な違いは、以下のリスクタイプによって説明されている。
市場リスク
信用リスクに関して、ソルベンシーPICMショックは債券ポートフォリオに基づいて調整されるため、債券の固定金利リスクは異なる。標準式とは対照的に、国債は、内部モデルでは0より大きい係数でショックを受ける。
株式リスク・ショックは、Aegon自身のポートフォリオに基づいて調整される。さらに、株式エクスポージャーは株式ボラティリティリスクに対してもショックを受ける。
為替リスクについては、ショックはAegon自身のポートフォリオに基づいて較正される。さらに、標準式では通貨エクスポージャー間に分散がないのとは対照的に、ソルベンシーPICMでは異なる通貨へのエクスポージャー間で分散が認められている。
金利リスクに関するソルベンシーPICMの結果は、以下の理由により標準式の結果とは異なる。
・標準式の金利ショックは金利曲線の平行移動のみを考慮するが、ソルベンシーPICMは平行移動だけでなく、金利曲線のフラットニング(平坦化)とツイスティング(ねじれ)を考慮する。
・ソルベンシーPICM金利曲線ショックは、Aegonのポートフォリオに関連する過去の市場データに基づいて調整される。
・ソルベンシーPICMは、ショック・シナリオでは終局フォワードレート(UFR)は変化しないと仮定しているが、標準式の金利ショックでは、UFRを含む曲線全体が移動すると仮定している。
・さらに、ソルベンシーPICMには、金利ボラティリティリスクに対する所要自己資本が含まれる。
・Aegon UKの場合、ソルベンシーPICMに基づく金利リスクには、給付金の支払い及び費用に対するインフレショックも含まれる。一方、標準式の下では、事業費のインフレショックは生命保険費用リスクに含まれる。
引受リスク
長寿リスクに関するソルベンシーPICMは、標準式とは次のように異なる。
・ソルベンシーPICMは、国民死亡率ショックと経験因子ショックを区別するが、標準式は全ての死亡率の一定の減少を仮定する。
・ソルベンシーPICMは年齢と性別に死亡率を予測するが、標準式は全ての年齢と性別で同じショックを仮定する。
Aegon UKの保険契約者の行動(解約)リスクは、ソルベンシーPICMの下では、パラメータと伝染ショックの総計だが、標準式では、パラメータと伝染ストレスのうち大きい方である。さらに、ショックはAegon UKポートフォリオで調整されているため、標準式よりも大きなショック規模になり、分散化前のSCRが高くなる。
ソルベンシーPICMのストレスは事業費レベル、トレンド及びボラティリティ・ストレスをカバーするため、Aegon UKの総計ソルベンシーPICMの事業費リスク・ショックは標準式ストレスよりも高くなっている。これにより、分散化前のSCRが高くなる。
オペレーショナルリスク
Aegon UKの場合、オペレーショナルリスクに関するソルベンシーPICMは、標準式とは次のように異なる。
・ソルベンシーPICM は、対象分野の専門家の意見に基づいており、ワークショップを使用して経験データによって補足された可能なシナリオを生成する。 標準式は、技術的準備金、保険料、経費に基づいているのに対して、データは確率モデルに適合される。
・ソルベンシーPICMは、オペレーショナルリスクの分散化を全く認めていない標準式とは対照的に、他のリスクタイプによるオペレーショナルリスクの分散化を可能にする。
分散化
ソルベンシーPICMの内部モデルと標準式の構成要素の間の分散は、統合手法3(IT3)を使用して計算される。このEIOPA規定の統合手法は、内部モデルと標準式の構成要素との間のインプライド線形相関係数がどのように計算されるかを説明している。この相関係数は、平方根公式を使用して合計ソルベンシーPICM SCRを計算するために使用される。標準式では、リスクモジュール別及び合計レベルで分散を計算するために、相関行列を使用する。