ユーロ圏消費者物価(25年5月)-総合指数は前年比で再び2%割れに

2025年06月04日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:総合指数は2%割れ、コア指数も2%台前半に低下

6月3日、欧州委員会統計局(Eurostat)は5月のユーロ圏のHICP(Harmonized Indices of Consumer Prices:EU基準の消費者物価指数)速報値を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数】
前年同月比は1.9%、市場予想1(2.0%)より下振れ、前月(2.2%)から低下した(図表1)
前月比は▲0.0%、予想(0.0%)と一致、前月(0.6%)から低下した

【総合指数からエネルギーと飲食料を除いた指数2
前年同月比は2.3%、予想(2.4%)より下振れ、前月(2.7%)から低下した(図表2)
前月比は▲0.0%、前月(1.0%)から低下した

 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 日本の消費者物価指数のコアコアCPI、米国の消費者物価指数のコアCPIに相当するもの。ただし、ユーロ圏の指数はアルコール飲料も除いており、日本のコアコアCPIや米国のコアCPIとは若干定義が異なる。

2.結果の詳細:サービスインフレの低下がインフレ率を押し下げ

5月のHICP上昇率3(前年同月比)は全体で1.9%となり、4月(2.2%)から低下し、ECBの2%物価目標を下回った。2%割れは24年9月(1.7%)以来となる。「コア部分(=エネルギーと飲食料を除く総合)」は2.3%と4月(2.7%)から低下した。

以下、詳細を「コア部分」「エネルギー」「飲食料(アルコール含む)」の3つに分けて見ていく。

まず、コア部分である「エネルギーと飲食料を除く総合」の内訳を見ると、「エネルギーを除く財(飲食料も除く)」が3月0.6%→4月0.6%→5月0.6%と横ばい推移が続いている。「サービス」(エネルギーを除く)は3月3.5%→4月4.0%→5月3.2%となり、4月に一時的に反発したが、5月は大幅に低下し、3%付近まで下がった。前年同月比寄与度は、「財」が0.15%ポイント程度、「サービス」が1.40%ポイント程度と見られる。

コア以外の部分では「エネルギー」が前年同月比で3月▲1.0%→4月▲3.6%→5月▲3.6%と前月並みのマイナスとなった。エネルギーの前年同月比寄与度は▲0.42%ポイント程度(3月は▲0.35%ポイント)と見られる(前掲図表2)。
「飲食料(アルコール含む)」は、前年同月比で3.3%(4月3.0%)と上昇(図表3)、内訳を見ると、飲食料のうち加工食品の伸び率は2.9%(4月2.4%)に上昇したが、未加工食品が4.4%(4月4.9%)と低下した。飲食料の前年同月比寄与度は0.69%ポイント程度(4月は0.57%ポイント)と見られる。

5月は主にサービスインフレの低下が総合指数やコアのインフレ率を低下させる形となった。

物価上昇の勢いをECBが公表する季節調整済系列で確認すると(図表4)、3か月移動平均後の3か月前比年率で総合指数が1.5%(4月2.5%)、コアが2.7%(4月2.9%)、エネルギーを除く財が0.4%(4月0.6%)、サービスが4.0%(4月4.1%)、飲食料が2.9%(4月2.4%)となった。5月は総合指数の物価上昇の勢いも2%を下回った。
国別のHICP上昇率は、前年同月比で20か国中、上昇したのは7か国、残りの13か国は低下した(図表5)。また、物価目標の2%を下回ったのは7か国だった。なお、前月比では20か国中12か国がプラス、7か国がマイナスの伸び率、1か国が横ばいとなった(図表6)。
 
3 23年からはユーロ圏20か国のデータ、22年までは19か国のデータ(以降も特に断りがない限り同様)。

経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

 ・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
  アドバイザー(2024年4月~)

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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