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ユーロ圏GDP(2025年1-3月期)-前期比0.4%に加速

2025年05月01日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:前期比0.4%に加速

4月30日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏GDPの一次速報値(Preliminary Flash Estimate)を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【ユーロ圏20か国GDP(2025年1-3月期、季節調整値)】
前期比は0.4%、市場予想1(0.1%)を上回り、前期(0.2%)から上昇した(図表1)
前年同期比は1.2%、市場予想(1.1%)を上回り、前期(1.2%)から横ばいだった(図表2)

 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想も同様

2.結果の詳細:今回公表のユーロ圏11か国はいずれも前期比プラス成長

ユーロ圏の25年1-3月期の成長率は前期比0.4%(年率換算1.4%)となり、24年10-12月期(前期比0.2%、年率1.0%)から加速した。実質GDPの水準はコロナ禍前(19年10-12月期)対比では5.3%、エネルギー価格が高騰した22年の夏(22年7-9月期)対比では1.6%となった。

経済規模の大きい4か国の伸び率を見ると、前期比ではドイツ0.2%(24年10-12月期▲0.2%)、フランス0.1%(同▲0.1%)、イタリア0.3%(同0.2%)、スペイン0.6%(同0.7%)となった(図表3横軸)。このほか、公表されたユーロ圏の11か国はすべて前期比伸び率がプラスとなり、特にアイルランド(前期比3.2%)の伸びが目立った。前期比伸び率について、ドイツ統計局は家計消費と投資がプラス成長となったと指摘、イタリア統計局は供給面では農林水産と工業がプラス成長、サービス業は横ばいで、需要面では内需の寄与がプラスとなる一方で純輸出の寄与がマイナスだったと指摘している(フランス・スペインは後述)。なお、前年同期比ではドイツ、オーストリアが依然としてマイナス圏にある(図表3縦軸)。特にドイツは前年同期比で見ると7四半期連続のマイナスと低迷が続いている。エネルギー危機対比ではドイツ、フィンランド、エストニア、オーストリアがマイナス圏にある(図表4)。
次にフランスとスペインは各国統計局(フランス国立統計経済研究所(INSEE)、スペイン統計局(INE))がGDPの詳細を公表しているので、以下で確認する。

フランスの成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費0.0%(前期0.2%)、政府消費0.1%(前期0.4%)、投資▲0.2%(前期▲0.1%)、輸出▲0.7(前期0.2%)、輸入0.4%(前期0.5%)となった(図表5)。在庫変動の前期比寄与度は0.5%ポイント、純輸出の前期比寄与度は▲0.4%ポイントであり、主に在庫の積み増しが成長率を押し上げており、消費や投資、輸出といった主要項目は伸び悩んだ。産業別の付加価値は、工業が0.0%(前期▲0.3%)、建設業が▲0.5%(前期▲0.8%)、市場型サービス産業が0.2%(前期▲0.2%)、非市場型サービスが0.1%(前期▲0.2%)だった。より細かい内訳では、金融・保険(前期比0.9%)、情報(0.7%)が高めの伸びを記録、電気・ガス・水道▲1.2%)、卸・小売(▲0.5%)、輸送(▲0.2%)といった業種は冴えなかった。
スペインの成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費0.4%(前期0.9%)、政府消費0.2%(前期0.2%)、投資1.1%(前期3.5%)、輸出1.0%(前期0.1%)、輸入0.7%(前期1.3%)となり、主要内需(個人消費、投資)の伸びが前期から鈍化したものの、輸出がやや加速した(図表6)。産業別には、農林水産業が7.1%(前期▲0.7%)、工業が1.1%(前期0.2%)、建設業が0.4%(前期2.6%)、サービス業が0.3%(前期0.9%)となり、ここのところ高成長が続いていたサービス業の伸びが低下したが、農林水産業や工業が高成長を記録した。

経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

 ・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
  アドバイザー(2024年4月~)

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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