欧州大手保険グループの2024年の生命保険新契約業績-商品タイプ別・地域別の販売動向・収益性の状況-

2025年04月25日

(中村 亮一) 保険計理

Allianz
(1) 全体の状況
2024年の新契約価値(VNB8は、2023年に比べて17.8%増加して4,694百万ユーロとなった。これは販売実績が好調だったことと新契約マージンが5%台の高水準を維持したことによる。

新契約マージン(New Business Margin(=新契約価値/新契約保険料現在価値(PVNBP))は、2023年に比べて0.2%ポイント低下して5.7%となったが、目標水準の5%を大きく上回っている。

また、新契約保険料現在価値(PVNBPは、全ての主要事業体で二桁の売上高成長を達成したことにより、21.6%増加して81,827百万ユーロとなった。売上高の増加は、ドイツ生命保険(+47億ユーロ)、米国(+35億ユーロ)、イタリア(+21億ユーロ)、アジア・太平洋地域(+14億ユーロ)が牽引した。
なお、2024年の新契約CSMは5,237百万ユーロで、VNBの4,694百万ユーロへの調整は、対象契約9で+150百万ユーロ、(保険契約の履行に帰属しない)非帰属費用で▲693百万ユーロ、となっている。
 
8 Allianzは、VNBについて、以下のように説明している。
「VNBは、新契約の引受けによって生じる株主への追加価値であり、新契約費用のオーバーラン又はアンダーラン及び非帰属費用を調整した税引前の将来利益の現在価値からリスク調整を引いたものとして決定される。」
9 PAA(保険料配分アプローチ)が適用される短期契約やIFRS第9号が適用される投資契約
(2) 新契約マージン(対PVNBP)等の地域別状況
PVNBP、VNB及び新契約マージン(NBM)(対PVNBP)の地域別状況は、次ページの図表の通りとなっている。

新契約マージンは、アジア・太平洋、中東欧で高く、フランス、イタリア等では相対的に低くなっている。

2021年には2020年と比較して多くの国で水準を回復ないしは上昇させていたが、2022年には金利の上昇の影響により、アジア・太平洋を除く各国・地域で上昇していた。2023年は、ドイツの生命保険で横ばい、ドイツの医療保険で6.6%から5.5%に1.1%ポイント低下、ベネルクス、スペイン、米国等で低下したものの、その他の地域では上昇し、グループ全体では横ばいの5.9%だった。これに対して、2024年は、ドイツ医療保険、中東欧、ベネルクス、アジア・太平洋で増加し、トルコ、米国で横ばいだったものの、ドイツ生命保険やイタリアで低下したことの影響により、グループ全体では0.2%ポイント低下して5.7%となった。

ドイツ生命保険は、短期契約や大口法人契約​への旺盛な需要に支えられ、売上が好調だったことから、PVNBPが大きく進展した。ドイツ医療保険は、全商品ラインで新契約が好調に伸び、全ての販売チャネルが貢献した。

フランスでは、新契約マージンの上昇と保険・医療事業がVNBの成長を牽引した。

イタリアでは、主にファイナンシャルアドバイザーと代理店によるユニットリンクの販売が24.2%進展と好調で、ユニットリンクの販売シェアが65%に拡大するとともに、VNBの成長を牽引した。

米国では、第3四半期のFIA(固定指標年金)販売促進策に支えられ、全商品ラインで好調な販売実績を達成した。また新契約マージンは6.1%と高い水準を維持している。

アジア・太平洋は、VNB全体への貢献度において、米国、ドイツ生命保険に次ぐ第3位で、ほぼ全ての事業体で販売が好調に推移し、非常に魅力的な利益率を達成したことが、VNBの31.5%増加につながった。全商品ラインで新契約マージンが6%以上となっている。
(3) 新契約マージン(対PVNBP)等の商品タイプ別状況
PVNBP、VNB及び新契約マージン(対PVNBP)の商品タイプ別状況は、以下の図表の通りとなっている。
PVNBPの構成比は、保証付貯蓄・年金が7.2%(2023年は7.8%、以下同様)、高資本効率商品が49.4%(45.6%)、ユニットリンクが23.8%(25.0%)、保障&医療が19.6%(21.5%)、となっている。これにより、(保証付貯蓄・年金以外の)高資本効率商品等の会社の優先商品のシェアは、2017年の76%から2024年の92.8%へとさらに上昇している。

(参考)営業利益の商品タイプ別内訳
営業利益の商品タイプ別内訳は、以下の図表の通りで、保有ベースでは、ほぼ、保証付貯蓄・年金の構成比が低下し、高資本効率商品やユニットリンクの構成比が上昇してきている。
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