2|各国当局、独立した専門家及び市民社会組織との協力
VLOP等は、目前の選挙に適用される国の選挙ガバナンス構造と、様々な当局の役割を認識しておく必要がある。選挙キャンペーン期間の区切り、選挙候補者の正式な指定のタイミング、選挙沈黙期間など、特定の国の手続きをよく理解することで、VLOP等は、関連する加盟国特有の側面を考慮したリスク軽減策を設計することができる。そのため、VLOP等は定期的に、また、必要な場合には緊急に、欧州委員会、加盟国のデジタルサービス調整官、場合によっては、地域および地方の所轄当局といった国内および欧州の所轄当局と情報交換を行う窓口を設置することを欧州委員会は勧告する。
VLOP等と所管の国家当局との間のこのような相互作用において共有される情報については、選挙プロセスに関するリスク評価および軽減措置のために提供される情報、または選挙プロセスの完全性を保護するための国家当局の権限内にある情報に限定されるべきである。国家当局との協力と並行してVLOP等は、関連する非国家主体との強力な協力関係を築くことも推奨される。
選挙キャンペーン期間中に、選挙運動組織や選挙オブザーバーを含む非国家主体とのコミュニケーション・チャネルを確立することは、VLOP等が選挙の状況をよりよく理解し、緊急事態に迅速に対応し、リスク軽減策を設計・調整し、その軽減策が現地の状況においてどのように機能するかをよりよく理解するのに役立つ。
ジャーナリストと報道機関は、情報を収集し、処理し、国民に報告するという重要な役割を果たしている。独立した報道サービス・プロバイダーや、社内の編集基準や手順が確立している組織は、信頼できる情報源として広くみなされている。したがって、VLOP等は、独立したメディア組織、規制当局、市民社会および草の根組織、ファクトチェック機関、学界、その他の関連する利害関係者と協力して、信頼できる情報の特定と、信頼できる情報源からの選挙に関連する多元的なニュース・メディア・コンテンツへのユーザーによるアクセスを強化するためのイニシアティブをとるべきである。
欧州委員会は、VLOP等が、例えば、欧州ファクトチェック基準ネットワーク(EFCSN
13)のメンバーであり、その基準綱領に従い、高い水準の方法論、倫理、透明性を遵守する独立したファクトチェック組織と協力することを推奨する。
(注記) 本節は、VLOP等が情報収集および協力をすべき相手方とその内容について記述している。まずはEU機関や国家との間で選挙のルールなどについて情報を取得することを述べている。公式情報により、選挙活動の規則違反を起こさないようにすることがその眼目である。また、選挙運動組織・選挙オブザーバーと協力をすることで選挙状況の理解・緊急事態への対応によりよく適応することが可能であるとする。これだけであれば当事者からの情報収集・協力であるといえる。しかし、ある程度以上の情報共有は国家による情報操作あるいは選挙支配につながりかねないため、制限されるべきともしている。
本節ではその他の主体、報道機関、市民社会団体、ファクトチェック機関、学界などと協力をすることを求めている。繰り返しとはなるが、これら主体は完全に中立ということが確保されているわけではない。したがってVLOP等は可能な限り多様な主体との意見交換を通じて、中立的な立場を目指すことが求められていると考えられる。