中村 亮一()
研究領域:保険
研究・専門分野
E.4.3.内部モデルで使用される方法
各リスクカテゴリの標準計算式とIMの主な違い
各リスクカテゴリの標準計算式とIMの主な違いは次のとおり。
1.生命保険引受リスクに関して:
・IM生命保険引受ストレス較正は、標準式アプローチで要求されている規制で定義されているストレスレベルではなく、過去のポートフォリオデータに基づいている。特に、IMストレス較正は、以下によって定義される、不利な事象から生じる、計算の基礎となる仮定における潜在的な偏差が技術的準備金に与える影響に基づいている。
・市場データと災害リスク(死亡及び健康)の較正のためのエクスポージャーの組み合わせ
・他の全ての生命保険リスクに関する単一法人の過去のポートフォリオデータ
2.損害保険引受リスクに関して:
・標準式アプローチが標準偏差に基づいているのに対して、IM内の価格設定及び準備金評価リスクに関する引受契約に関するボトムアップの較正アプローチを採用している。
・カタストロフィー(CAT)リスクに関しては、標準式の較正はエクスポージャーの地域に基づいて事前定義されたEIOPA比率を使用しているのに対して、IMは市場のベストプラクティスに基づく先進的な方法を使用している。
・再保険に関しては、標準式では単純化アプローチが採用されているが、IMでは過去の協定の残りの単純化と任意再保険による将来の再保険条約の具体的なモデリングを考慮している。
3.金融及び信用リスクに関して
・市場リスクについては、標準式アプローチは資産に直接適用される標準化されたストレスレベルの適用、又は金利リスクの場合は将来キャッシュフローを割り引くために使用される曲線への標準化され単純化されたストレスの適用に基づく。
・IMは、より詳細なリスクマップに基づいた、より洗練されたモデリング手法を採用している(例えば、金利及び株式のボラティリティリスクは、標準式では考慮されないが、IMでは考慮され、デフォルトリスクの計算は債券ポートフォリオにも拡張される)
・IMは、同じリスクモジュール内で、リスクプロファイルをより正確に表現することを目的としている。IMアプローチは、大規模な資産クラスに同じストレス係数を適用するのではなく、各金融商品の特性に関連する特定のストレス分布を調整する。較正は年ごとに見直される。
・信用スプレッド拡大リスクは、標準式とは異なり、PIMの下の信用リスクモジュールに分類されることに留意する。
4.オペレーショナルリスクに関して
・オペレーショナルリスクに対する標準式アプローチは、元受けや非元受け保険料や技術的準備金等の会社の規模に対する事前定義された割合の適用に基づいている。
・IMは、リスクプロファイルのより正確な表現を目指して、専門家の判断を要求するシナリオに基づいた、より洗練されたモデリングテクニックを適用している。リスク所有者が他の専門家のサポートを受けながら、各オペレーショナルリスクカテゴリに対する頻度や影響推定を行う。
E.4.4標準式と内部モデルの方法論と基礎となる前提の差異
標準式と内部モデルの方法論の主な差異は、内部モデルリスクの方法論と前提がAvivaのリスクプロファイルに合わせて調整されているのに対し、標準式は標準化されたアプローチであるという点である。
標準式は、様々なリスクへのエクスポージャーによってもたらされる必要資本を計算するための公式を規定している。内部モデルについては、グループと単体の事業体が各リスクについて損失分布を調整し、これらのリスク間の一連の相関関係とともにこれらを使用して、事業に関する共同の損失分布を導き出す。また、グループと単体の事業体が99.5%の信頼性で十分な資本を保有することを確実にするために、所要自己資本はこの共同分布から導き出される。したがって、内部モデルのリスクを調整するには、詳細なデータ分析と最も適切な分布を導き出すための統計モデルの使用が必要となる。
2つのベースは技術的準備金の損失吸収能力について異なる取扱いをしている。内部モデルでは、グループと単体の事業体はこれを控除した損失関数を使用するが、標準式では、これは基本ソルベンシー資本要件(BSCR)に対する調整として適用される。繰延税金の損失吸収力の計算も、標準式の計算で指定されているため、2つのアプローチの間で異なる。
内部モデルと標準式の集計方法における1つの重要な違いは、異なるモデリング方法によるものである。
・内部モデルの場合、Avivaは、ガウスコピュラを使用し、損失関数を適用して、各リスクの限界リスク分布を組み合わせて、損失の総計分布を決定する。
・標準式では、階層型相関アプローチを使用している。ここでは、明示的な相関行列を使用して、各リスクモジュール内のサブモジュール損失額を統合し、次に様々なリスクモジュールの計算された損失額を統合する。
標準式と比較した我々のアプローチの重要な特徴は、ファットテールリスク(すなわち、極値の確率が正規分布を使用するよりも高いリスク)及び非線形損失プロファイルを捕捉できることである。さらに、分散化をより詳細にモデル化することができ、特に地理的分散化などの重要な特徴を捉えることができる。もう1つの重要な違いは、標準式がリスクの一部のみしか考慮していないのに対して、内部モデルはAvivaがさらされている全ての重要な定量化可能なリスクを反映している。
(i)市場リスクモジュール
・内部モデルは、市場のボラティリティの変化を考慮しているが、これは標準式では明確にモデル化されていない。金利及び株式のボラティリティリスクは、保証のある契約にとって特に重要である。
・信用リスク - Avivaのモデルにはソブリン債が含まれているが、現時点では標準式ではモデル化されていない。このモデルはまた、様々な信用エクスポージャー間の分散化に対するある程度の許容を含む、デフォルトの移行及びスプレッドリスクを明確に考慮している。
・金利は、標準式の下での金利水準の変化だけではなく、3つの主要な要素を使用してモデル化されている。
・インフレリスク - Avivaは明示的にインフレリスクをモデル化している。標準式にはインフレリスクはない。
・株式/不動産リスク – 標準式では資産価格の下落に対するエクスポージャーのみが反映されるが、Avivaは株式/不動産のリターンの完全な分布をモデル化しているため、株価又は不動産価値の上昇又は下落に対するエクスポージャーを把握できる。
・為替リスク - Avivaは、このリスクへのエクスポージャーが他のリスクの影響によって変化し、通貨間に分散があることを反映して為替換算リスクをモデル化するが、これらの要素は標準式では評価されない。
(ii)健康保険リスクモジュール
・当社の生命保険契約によって引き受けられた健康保険契約は、別途モデル化されている。現在、当社の損害保険契約によって引き受けられた健康保険契約は、標準式を使用して評価されている。
(iii)カウンターパーティデフォルトモジュール
・標準式では、1つのモジュールの下で全てのカウンターパーティデフォルトリスクを考慮している。一方、内部モデルについては、当グループは、モデルをカウンターパーティのタイプとエクスポージャーの性質に合わせて調整している。
(iv)生命保険モジュール
・標準式は標準ポートフォリオを想定しているが、Avivaの較正はその固有のポートフォリオに合わせて調整されている。
(v)損害保険モジュール
・Avivaは、当グループがAviva General Insurance事業の固有のリスク及びエクスポージャーをモデル化することを可能にする損害保険固有のモデルを構築した。標準式では、Aviva General Insurance事業にとって重要なリスクの1つであるインフレの影響を明示的に考慮していない。
・さらに、当グループはコマーシャル・ラインとパーソナル・ラインを区別しているが、標準式はこのレベルの細分性を反映していない。
(ⅵ)オペレーショナルリスク
・Avivaはシナリオベースのアプローチを使用してオペレーショナルリスクをモデル化している。標準式は公式アプローチを使用している。