中村 亮一()
研究領域:保険
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2―SCRとMCRの計算方法の説明
E.2ソルベンシー資本要件(SCR)と最低資本要件(MCR)
当グループは、2015年11月17日、ソルベンシーIIのSCRを計算するために内部モデルを使用することについてACPR(フランスの監督当局)と監督カレッジからの承認を受けた。内部モデルは、AXAグループの全ての重要な会社に対する定量化可能なリスクをカバーしている。
内部モデルは、AXAの各事業体が、ローカルリスクプロファイルをよりよく反映するローカルキャリブレーションを選択し、グループがさらされている全ての重要なリスクを捉えることができるように設計されている。結果として、内部モデルは、AXAグループ全体のSCRをより忠実に反映し、SCRメトリクスが経営陣の意思決定とより整合的になると考えている。
一般原則
ソルベンシーIIは、2つの異なるレベルのソルベンシー資本要件を規定している。(I)最低資本要件(MCR)。会社レベルで適用され、保険契約者や受益者が許容できないレベルのリスクにさらされる自己資本の額である。(II)ソルベンシー資本要件(SCR)は、会社及びグループの両方のレベルで適用され、保険及び再保険会社が多額の損失を吸収することを可能にする適格自己資本のレベルに相当する。それは、支払が期日までに行われるという保険契約者及び受益者への合理的な保証を与える。
ソルベンシー資本要件(SCR)
2023年2月23日に公表された2022年12月31日現在のAXAグループのソルベンシーII比率は2021年12月31日の217%に対して、215%であった。グループは、2022年の全ての時点でSCRを超過する適格自己資本を維持した。
当グループは、内部モデルの範囲、基礎となる方法論及び前提条件を定期的に見直し続け、それに応じてSCRを調整する。しかしながら、内部モデルのいかなる大きな変更も、SCRの水準を調整することを要求するかもしれないACPRによって承認されなければならない。
さらに、当グループは、その目的を通じて欧州保険会社のモデルの一貫性の見直しを行うことが期待されているEIOPA(欧州保険年金監督局)の作業計画をモニタリングしている。そのような見直しが、コン バージェンスを高め、国境を越えたグループの監督を強化するための、内部モデルやソルベンシーII資本要件への変更を含むさらなる規制改正につながる可能性がある。
2022年12月31日現在で、AXAのグループSCRは272億ユーロで、内部モデル範囲(249億ユーロ)、標準式会社(10億ユーロ)、同等性による会社(0.4億ユーロ)、セクター別ルール (年金事業、銀行、資産運用)(12億ユーロ)という異なる要素に分割される。AXAグループSCRに関する追加情報については、QRT S.25.02.22「ソルベンシー資本要件- 標準式及び部分内部モデルを使用するグループのための」を参照のこと。
2022年12月31日現在の連結IFRS数値に基づくと、指令2009/138/ECの第231条の下での規制グループベースの内部モデルの一部である(再)保険会社は次の通りとなっている。
■(再)保険活動からの収益の92%
■(再)保険及び投資契約からの負債の96%
■ 投資の95%
2021年に比べて、AXAのグループSCRは286億ユーロから272億ユーロに減少した。この減少は主として以下の要素による。
■市場SCRが、株式へのエクスポージャーの削減(売却/ヘッジ/市場)と、円およびスイスフラン通貨のIBOR移行による一時的な影響により、約16億ユーロ減少。金利の急上昇による影響で一部相殺
■生命保険SCRが、好調な市場状況に寄り13億ユーロ減少
■損害保険SCRが、金利上昇、規模の拡大及び再保険により、11億ユーロ減少
■オペレーショナルSCRがネットエクスポジャーの増加と新たなリスクにより、2億ユーロ増加
■繰延税金の損失吸収能力が、不利な市場環境に続く、より高い分散効果とネット繰延税金資産の減少の影響により8億ユーロ減少
2022年12月31日現在、SCRのリスクカテゴリによる内訳は、市場リスク43%、生命保険19%、損害保険25%、信用リスク8%、オペレーショナルリスク6%となっている。
グループ分散効果
内部モデルの分散効果は、異なるリスク/サブリスク又は異なるポートフォリオ/会社への集計方法の適用によって現れる。したがって、分散効果は、特定のリスク要因の範囲内、ポートフォリオ間、地域間又は異なるリスクカテゴリ間で現れる。
一例として、デュレーションギャップは、例えば、保障商品の長いデュレ―ションと年金の短いデュレ―ションのように、異なるポートフォリオに対して異なる符号を有することができる。このような場合、2つのポートフォリオを組み合わせると金利リスクが低下する。
リスク集計アプローチ内の細かさのレベルは、分散効果の測定に影響する主要な要因である。典型的には、集計アプローチが、地理、事業単位/法人レベル、リスクタイプ、商品タイプなどの次元に応じて、ポートフォリオや活動を区別するほど、より明示的な分散効果が明らかになる。内部モデルでは、主要なリスクカテゴリ(市場、信用、生命、損害、オペレーショナルリスク)全体にわたる集計と、地理/会社間の集計という、主な集計ステップを考慮したマルチレベル集計アプローチが実施 されている。
2022年12月31日現在の主要なリスク(市場、信用、生命、損害、オペレーショナル)における分散効果は117億ユーロであった。
範囲と計算方法
以下の表は、グループSCRを計算するために使用される内部モデルの範囲内にある会社を一覧表にしたものである。
グループ内で、指令2009/138/ECの第230条及び第233条で言及されている方法1(デフォールト法(会計連結法))と方法2(控除合算法)の組み合わせを使用して、グループ・ソルベンシーが計算される。方法2を用いる会社は、銀行、資産運用会社、年金基金を中心とした保険以外の金融セクターやソルベンシー制度が同等とみなされている米国の残りの子会社に関連している。 関連する主要な会社は以下の表に要約されている。