1|全体
ACPRは、金融システムの安定を確保するために、以下の優先事項を設定している。
1.国際的な経済・地政学的状況、特にエネルギー価格の上昇と成長見通しの悪化に関連するリスクの監視
銀行部門では、信用リスクの動向に特に注意が必要である。最も脆弱な産業や地理的領域への機関のエクスポージャーにも警戒が必要である。
保険分野では、建設保険や信用保険のような経済状況に非常に敏感な活動が、監視の強化の対象となる。
ACPRはまた、ウクライナ戦争に関連して国内外の当局が決定した制裁を実施するための機関の取り決めを監視している。
2.ウクライナ戦争の結果によって増幅される金利上昇、インフレ、不動産・金融資産の評価のリスクのモニタリング
銀行や保険のバランスシートリスク(借換え、資産・負債管理)の分析・モニタリング、住宅購入資金の融資基準を含む金融安定理事会のマクロプルーデンス判断のモニタリングに留意する。ACPRチームは欧州ストレステストに参加し、マクロ経済の非常に不利なシナリオにおいて、銀行が3年間にわたってシミュレートされたショックを吸収する能力を評価する。
他の金融機関(投資会社、決済・電子マネー機関)の状況は、金融市場のボラティリティの高まりと資金調達源の減少により、注意深く監視される。
3.構造的なサイバー・気候リスクのモニタリング
気候変動との闘いにおいて、ACPRは物理的リスクと移行リスクが金融機関に及ぼす影響の分析と考察の先駆者となった(2021年にパイロット演習を実施)。2023年も作業を継続する(保険に関する演習、国際活動への貢献)。
ITリスク、情報システム戦略、サイバーリスクを含む技術開発と関連リスクのモニタリングを実施する。また、新たなデジタル金融仲介機関の分析も実施する。
4.顧客保護及びマネーロンダリング及びテロ資金供与(LCB-FT)との闘いの分野における行動の継続
ACPRは、銀行及び保険商品のマーケティングのガバナンスに引き続き焦点を当て、生命保険のコストに関する作業を継続する。ACPRはまた、証券会社改革の実施を監視し、ACPR-AMF共同ユニットの枠組みの中で金融詐欺に対する意識を高めるための更なる行動を実施する。
LCB-FTの分野では、自動取引監視装置に関するテーマ別レビューを最終決定し、デジタル資産サービス提供者を対象としたコントロールキャンペーンを実施し、2021年に欧州委員会が提示した「AMLパッケージ」の交渉に参加する。
さらに、規制分野では、銀行部門に関する欧州規制CRR 3及びCRD 6の最終決定、保険部門のソルベンシーIIの改訂に関する欧州における交渉、欧州委員会のデジタル金融ロードマップ(DSP 3、DORA)の実施に焦点を当てた作業を行う。
破綻処理の分野では、ACPRは、単一破綻処理委員会(Conseil de résolution unique (CRU))
7と連携して、特に一般的に低い要件の対象となる国際銀行との平等な取扱いを確保することにより、銀行の適格資本負債(MREL)の最低要件の確立に貢献する。
さらに、保険会社向けに 2022 年に作成された最初の破綻処理計画の継続と、保険の破綻処理に関する欧州文書草案に関連する作業への参加に焦点を当てる。
7 英語で「Single Resolution Board(SRB)」と呼ばれる。破綻銀行の秩序だった破綻処理を確保し、参加するEU 諸国及びその他の国の実体経済及び財政への影響を最小限に抑える役割を有している欧州銀行連合の破綻処理機関