(日銀)コロナオペの段階的終了を決定
日銀は9月21日~22日に開催した金融政策決定会合において、「新型コロナ対応金融支援特別オペ」(コロナオペ)を段階的に終了しつつ、幅広いニーズに応える資金供給へ移行していくことを決定した。具体的には、コロナオペのうち、中小企業等向けの制度融資分については、期限を3ヵ月延長して12月末に終了。プロパー融資分については、期限を半年間延長して来年 3 月末に終了する。他方、幅広い担保を裏付けとして実施している「共通担保資金供給オペ」について、金額に上限を設けずに実施することとした。
その他の金融政策については、長短金利操作、資産買入れ方針ともに現状維持となった。今回は審議委員のうち2名が交代
4して最初の会合となったが、これまで追加緩和を主張して長短金利操作に反対し続けた片岡氏が退任したこともあり、久々に全員一致での決定となった。
なお、円安の進行やコロナオペの終了予想を受けて一部で修正観測が台頭していたフォワードガイダンスについても、今回は変更なしであった。
声明文における景気の現状判断は、「持ち直している」と前回から据え置きとなった。一方で個別項目では、海外経済の判断が「総じてみれば緩やかに回復しているが、先進国を中心に減速の動きがみられる」(前回は「一部に弱めの動きがみられるものの、総じてみれば回復している」)へとやや下方修正された一方、生産の判断が「基調として増加している」(前回は「下押し圧力が強い状態にある」)へとやや上方修正された。また、住宅投資の判断が下方修正される一方で、公共投資の判断が上方修正された。先行きにかけて、景気が回復し、物価上昇が鈍化に向かうとの見方には変化がなかった。
会合後の会見で、黒田総裁は物価上昇が進む中で金融緩和を続ける理由について、日本経済が「コロナ禍からの回復途上にある」うえ、「資源高が交易条件の悪化を通じて海外への所得流出につながって、景気の下押し圧力になってしまう」という状況を踏まえると、「現在は経済を支えて、賃金の上昇を伴うかたちで 2%の物価安定の目標を持続的・安定的に実現することが必要であって、金融緩和を継続することが適当である」と説明。「今回の金融政策決定会合における委員方の考え方も、全くその通りだった」と付け加え、日銀としての総意であったことを示唆した。
そのうえで、長短政策金利については、「当面、金利を引き上げるというようなことはないと言ってよい」と述べ、金利のガイダンスを含めたフォワードガイダンスについても「当面、変更は必要とは考えている」と述べた。後者に関しては微調整は有り得るとしつつも、「当面というのは、数か月の話ではなくて、2~3 年の話というふうにお考えになって頂いた方がよい」と踏み込んだ発言をした。
円安の進行に関して総裁は、「様々な要因があるにもかかわらず、円安が進んできたことは一方的な動きであり、投機的な要因も影響しているのではないか」、「他の国で金利をかなり引き上げて長期金利が米国よりも高くなっている国も含めて、対ドルでかなり為替が下落している」、「従って、今の為替動向を日米金利格差だけで説明したり、云々するということはいかがかと思う」との認識を示し、「企業の事業計画策定を困難にするなど、先行きの不確実性を高め、わが国経済にとってマイナスである。望ましくない」と発言し、市場の動きをけん制した。
なお、10年物国債の取引が2日連続で不成立となるなど、機能度の低下が危惧される債券市場については、債券市場サーベイの機能度判断DIの下落を指摘したうえで、「債券市場の動向については、引き続き注意深くみていきたい」と述べた。
また、為替介入が実施された後の27日に大阪で行われた記者会見で、黒田総裁は介入について「これまでのような急速かつ一方的な為替の変動は日本経済にとって好ましくないというのは事実であるため、そうした観点から政府が介入されたことは適切であった」と前向きに評価。政府の為替介入と日銀の金融緩和は、政策の方向性が異なるのではないかとの指摘に対しては、「為替介入と金融政策でも目的も効果も違うが、それらが組み合わされてより適切な状況が実現されるというポリシーミックスで、相互補完的だ」との認識を示した。
長期金利の許容上限引き上げが金融引き締めになるのかとの質問に対しては、「それはなる」、「±0.25%の幅をより広くしたら、仮にその上の方に行けば、明らかに金融緩和の効果を阻害しますので、そういうことは考えていない」と、上限引き上げの可能性を否定した。
一方、決定会合後の総裁会見で言及した「当面」の期間については、「新型コロナウイルス感染症の影響を注視しつつ政策を行う期間であり、必ずしも「2~3 年」という長期ということではない」と発言のトーンを落とした。自身の任期を大幅に超える期間の政策についての言及であるうえ、市場で円安材料と見なされた可能性があることから、修正を図ったものと考えられる。
4 片岡氏、鈴木氏の後任として、7月24日に高田氏と田村氏が審議委員に就任している。