12 ヘルシンキ宣言の内容については、前稿(前編)をご参照いただきたい。
13 未成年者、知的障がい者、精神障がい者を被験者とする場合、理解力や判断力の点から同意能力が不十分な場合がある。そのような場合でも、可能な限り、被験者が理解できる説明文書を準備し、本人の意思を尊重する努力が払われなければならないとされている。(後述の「(参考) インフォームド・アセント」もご参照いただきたい。)
14 立会人とは、当該治験の実施とは独立した立場にあり、治験に関与する者から不当に影響を受けず、同意取得の過程に立ち合う者を指す。治験責任医師、治験分担医師、治験協力者が立会人になることは認められない。
(参考) インフォームド・アセント
小児が被験者となる場合、代諾者である保護者のインフォームド・コンセントを行うことは必須であるが、それだけではなく、小児の被験者本人からも法的規制を受けない同意である「インフォームド・アセント」を得ることがICHガイドライン
15で求められている。アセントとは、治験への参加に対する子どもからの了解(賛意)と解されている。
インフォームド・アセントにあたっては、対象者の年齢等を考慮して、イラスト等を用いながら、わかりやすい言葉や表現で、治験の説明を行うことが求められる。
15 ICH E11「小児集団における医薬品の臨床試験」およびICH E11 (R1)「小児集団における医薬品の臨床試験に対する補遺」
2|保険が適用されない医療費は治験依頼者が負担 (企業治験の場合)
被験者は、治験のために医療機関で医療を受ける。治験に参加することで発生する費用の負担についてみてみよう。
(1) 負担軽減費
一般に、被験者は治験に伴う検査や診察のために、医療機関へ何回も通院することとなる。その結果、通院費用の増加や生活時間の拘束が生じる。また、治験薬の投与に伴う、副作用等の身体的・精神的負担に苦しむケースもある。
こうした費用や負担を軽減するための措置として、企業治験では、1999年に、被験者に負担軽減費が支払われることが制度化された。この費用は、治験依頼者が用意する。金額は通院1回につき、7,000円~10,000円などとされており、被験者に対しては、治験参加時に説明文書のなかで説明される。
なお、医師主導治験の場合には、限られた研究費の中で治験を実施しなければならないため、負担軽減費が支払われないケースもある。
(2) 治験に関する医療費
治験には、保険診療は適用されない。ただし、治験は、評価療養として認められており、他の保険診療と併用する「保険外併用療養費制度」の対象となる。
企業治験の場合、治験実施期間中
16、(1)検査および画像診断、(2)被験薬の同種同効薬
17(投薬および注射)、(3)治験薬の費用は、保険外併用療養費の給付対象外となり、治験依頼者が負担する。
このうち、(1)については、治験とは無関係の検査や画像診断の費用も、すべて治験依頼者が負担する。それ以外の基本診療料や、処置・手術等の費用は、保険外併用療養費の給付対象となる。
治験実施期間前後の観察期間中は、治験に関するものを含めて、すべて通常の保険給付となる。
一方、医師主導治験の場合、上記(1)~(3)のうち、(3)の治験薬の費用のみが、保険外併用療養費の給付対象外とされている。そこで、(3)については、自ら治験を実施する者(治験責任医師等)が研究費から負担するか、もしくは治験薬提供者(医薬品メーカー)から提供を受けることとなる。
これを図示すると、つぎのとおりとなる。ピンク色部分が被験者である患者の負担、青色部分が保険給付、黄色・オレンジ色部分が治験依頼者や治験責任医師等の研究費からの負担となる。