1|問題
今日の経済はデータに基づいて運営されており、保険業界も例外ではない。テクノロジーとコンピューター処理機能の向上は、前例のない量のデジタル消費者情報の利用可能性と相まって、様々な商業、金融、テクノロジー企業による消費者データの広範な使用につながった。これは、欧州連合(EU)での行動と、国のデータプライバシー法を可決するよう議会に圧力をかけることと相まって、保険業界に適さない可能性のある州の取組みと解決策の先取りの懸念を引き起こす。州の保険規制当局は、保険セクターにおけるテクノロジーと消費者データの革新的な使用から生じる利益と害について疑問を投げかけ続けている。彼らはまた、ビッグデータの影響を追跡している。人工知能(AI)などの自動化されたアルゴリズムベースの意思決定は、既存の規制の枠組みに基づいている。
(1)データのプライバシー
データプライバシーとは、消費者が個人データを管理する量を指す。現在、スマートフォン、インターネットブラウザ、その他のデジタル接続サービスを介して個人に関して収集された膨大な量のデータがある。EUの一般データ保護規則(GDPR)は2018年に発効し、消費者が個人データの収集と使用に「オプトイン」できるようにすることを企業に義務付けている。2020年1月、カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)が施行された。これには、カリフォルニア州で活動する営利企業が消費者に個人データの透明性と管理を提供することを要求している。イリノイ州、メイン州、ネバダ州も最近データプライバシー法を制定し、他の多くの州も同様の法律を検討している。
NAICには現在、消費者データのプライバシーを扱う2つのモデル法がある。
・NAIC保険情報とプライバシー保護モデル法 (#670)
・消費者金融及び健康情報規制の プライバシー (#672)
NAICプライバシー保護(D)ワーキンググループは、現在の州の保険プライバシー保護をレビューして、機能強化が必要かどうかを評価する責任がある。
(2)データテクノロジー
21世紀のデータの爆発的な増加に伴い、データを新しい方法で処理、管理、及び使用するための処理能力と速度の大幅な向上によって補完されるテクノロジーも開発された。クラウドストレージとSaaS(Software-as-a-Service)テクノロジーは、データストレージのコストを削減し、コンピューティング容量の大幅な増加に貢献している。AI、機械学習(ML)、自然言語処理(NLP)の手法を使用してデータを新しい方法で処理し、新しい洞察を引き出すことができる。 ブロックチェーンテクノロジーは、時間の経過とともに変更できない共有レコードを作成する。これにより、トランザクションの処理でエラーが発生しにくくなり、プロセスと組織の効率が向上する。これらのテクノロジーは全て、現在、世界中で保険事業を行うために使用されている。これは、州の保険規制当局に課題と機会をもたらす。
州の保険規制当局は、様々な方法でデータとテクノロジーのこれらの新しい使用法に関心を持ち、関与している。NAICは 、イノベーションとテクノロジーの問題について業界と関わるために、各州の保険部門の連絡先のリストをまとめている。NAICのメンバーと規制当局は、定期的にInsurTech コミュニティに参加している。州の保険規制当局は、これらの問題とその規制への影響、特に消費者保護に関する協力と議論を受け入れている。
(3)データの使用
データテクノロジーは、膨大な量のデータの利用可能性に依存している。保険会社は、消費者がテレマティクス、ウェアラブル、又はその他の モノの
インターネット(IoT)プログラムにオプトインできるようにすることで、独自のデータを作成及び収集している。IoTデバイスは、保険引受に通知するために、身体活動や運転習慣などの保険消費者の行動に関するデータを収集する。また、建物の水分センサーなどの特性を監視して、水害を早期に発見することもできる。これは、リスクを評価及び軽減するために使用できるだけでなく、消費者行動への洞察を提供するためにも使用できる。保険会社はまた、政府機関、地理情報システム(GIS)、ソーシャルメディアなどの公的に利用可能なソースからデータを収集し、AIやMLなどの手法を使用して様々な保険プロセスに関する意思決定を行う。
NAICビッグデータ及び人工知能(EX)ワーキンググループは、保険会社による消費者データ及び非保険データの使用を監視するために使用される既存の規制フレームワークのレビューを担当している。加速引受(Accelerated Underwriting)(A)ワーキンググループは、データ使用の分野にも携わっている。追加の規制措置又はガイダンスが必要かどうかを判断するために、加速生命保険引受における外部データ及びデータ分析の使用を調査する責任がある。