3|ドーピング検査として、2種類の検査が行われている
ドーピング検査は、実施時期により、競技会検査と競技会外検査の2つに分けられる。
(1) 競技会検査
競技終了後に競技会場で、検査を実施するもの。競技会参加の全選手に、検査の対象となる可能性がある。
(2) 競技会外検査
検査員が無予告で競技者の練習場や宿泊場所に出向いて、検査を実施するもの。検査の対象は、登録検査対象リストに掲載されている競技者。このリストは、一定レベルの競技力を有する競技者を掲載するもので、対象となっている競技者は、居場所情報の提出が求められる
40。検査は、申告(7日以内に使用した薬物やサプリメント)、尿検体、血液検体の採取などを通じて行われる。
40 次の四半期に競技者がいつ、どこにいるか。合宿、トレーニング、試合のスケジュールや自宅・宿泊先の居住の情報をADAMSというシステム(Anti-Doping Administration & Management system)に登録する。18ヵ月で累積3回の居場所情報不備の警告がなされた場合、ドーピング違反として、1~2年間の資格停止処分となる可能性がある。
4|ドーピング規則違反に対する制裁方法も定められている
ドーピング規則違反に対する制裁方法として、個人に対するものとチームに対するものの2つが定められている。
(1) 個人に対する制裁
ドーピング規則違反が発生した場合、競技大会の所轄組織の決定により、競技大会で得られた個人の成績は失効し、獲得されたメダル、得点、褒賞の剥奪を含む措置が課される。
また、資格の停止についても制裁措置が定められている。資格停止期間は、禁止物質・禁止方法の使用や保有の状況や違反の回数等に応じて、警告や1年間にとどまるものから、永久資格停止とするものまで規定されている。
(2) チームに対する制裁
チームスポーツのチーム構成員の 3 名以上が競技大会期間中にアンチ・ドーピング規則に違反したことが明らかになった場合、競技大会の所轄組織は、当該チームに対して、適切な制裁措置(例、得点の剥奪、競技会または競技大会における失効その他の制裁措置)を課すものとされている。
なお、競技者や財団法人日本アンチ・ドーピング機構(JADA)は、制裁措置の内容などに不服がある場合には、スポーツ仲裁裁判所(CAS
41)に不服申し立てをすることができる。
41 CASは、Court of Arbitration for Sportの略。スイスのローザンヌに本部がある。スポーツ関係のトラブルをスポーツ界のなかで解決することを目的とした一審制の仲裁機関となっている。
5|ドーピング規則には、治療目的使用に係る除外措置もある
禁止物質・禁止方法とされているものを、治療目的で使用したい場合には、あらかじめ競技者が申請して認められれば、使用可能となる。これは、「治療目的使用に係る除外措置(Therapeutic Use Exemptions, TUE)」と呼ばれる取り扱いである。競技者は、大会の30日前までに申請する必要がある。申請の際は、使用しないと深刻な障害を受けることや、使用によって競技能力が増強されない等の要件を満たすことが求められる。
おわりに (私見)