5|ジャンプ動作などで、膝にケガを負うこともある
スポーツのなかには、ジャンプ、ダッシュ、切り返しなどの動作で、下半身、特に膝に負担がかかるものもある。ここでは、膝前十字靭帯損傷、半月板損傷、ジャンパー膝についてみていこう。
(1) 膝前十字靭帯損傷
膝前十字靭帯は、膝関節の中で、大腿骨と脛骨をつなぐ靭帯で、主に、大腿骨に対して脛骨が前へ移動しないようにすること(前方安定性)と、ひねった方向に対して動きすぎないようにすること(回旋安定性)の、2つの役割を担っている。
膝前十字靭帯損傷は、バスケットボール、サッカー、バレーボール、バドミントンなど、ジャンプの着地や切り返しの動作が多い競技で、受傷しやすい。
受傷時は、症状として、強い痛みと出血による膝関節の腫れが生じることが一般的とされる。急性期を過ぎると、腫れがひいて膝の可動域が改善して日常生活上の不自由はなくなるが、損傷した靭帯の自然治癒は期待しづらいといわれる。この状態で競技に復帰すると、膝の亜脱臼である「膝くずれ」が起こりやすく、半月板損傷が生じることもある。
膝前十字靭帯は、MRI検査やX線検査により診断される。治療には、通常、自分の腱を移植する再建術が行われる
30。
手術後の競技復帰には、筋力トレーニングやアジリティトレーニングなどのアスリハが必要となる。近年、手術後の復帰率は高まっており、スポーツを断念するケースは少なくなっているとされる。
30 移植する腱として、主に、ハムストリング腱や膝蓋腱(しつがいけん)が用いられる。
(2) 半月板損傷
半月板は、膝の内側と外側の両方にあり、膝関節の軟骨を保護している。
半月板損傷は、サッカー、野球、ラグビー、柔道、相撲、バスケットボールなど、さまざまなスポーツで起こりうる。症状として、膝をひねる動作で痛みを感じたり、膝の曲げ伸ばしで引っかかり感を感じることが一般的とされる。損傷した半月板が関節にはさまる「ロッキング」の状態になると、膝を伸ばせなくなる。また、膝前十字靭帯損傷に伴って損傷することもある。さらに、中高齢者で特に外傷を受けていない場合、軟骨がすり減って起こる変形性膝関節症のケースもある。
治療法として、保存療法か手術治療のどちらかが選択される。痛みや引っかかり感が続いたり、ロッキングの症状がある場合は、「半月板部分切除術」や「半月板縫合術」が行われる。半月板部分切除術は、手術後早期にトレーニング可能となることが多い。ただし、半月板は血行が少ないため、通常、再生することは期待できない。このため、大腿四頭筋強化などのアスリハを行わないと、軟骨損傷を起こすことがある。一方、半月板縫合術は、手術後の復帰に数ヵ月程度の時間がかかる。損傷部が癒合すれば、半月板の機能回復が図られる。近年、手術器具や手術技術の革新が進み、半月板縫合術が行われるケースが増えているとされる。
(3) ジャンパー膝
バスケットボール、バレーボール、ハンドボールなど、ジャンプ、ダッシュ、ストップ動作を繰り返すスポーツで発生しやすい。
症状として、膝蓋骨の下に痛みを感じることが一般的である。保存療法による治療が基本とされる。症状がある場合、ランニングなどの運動を一定期間休止して、RICE処置を行う。大腿四頭筋のストレッチや膝蓋骨を動かすといったアスリハを行う。症状が重くなってからでは、復帰に時間がかかるため、早期の治療開始がポイントとされる。また、予防として、大腿四頭筋のタイトネスを防ぐために、膝関節周辺や大腿部のストレッチが重要となる。