医師の分布構造-今後増加する高齢の医師には、どういう医療を担ってもらうか?

2019年10月15日

(篠原 拓也) 保険計理

5――診療科ごとの医師の分布

最後に、診療科ごとに医師の年齢・性別の分布をみていく。診療科は、細かくみると多くの種類があり、医師によっては複数の診療科を標榜している場合もある。そこで今回は、診療科を大きく8つの区分に分けることとする7。なお、診療科には、医師が主たる診療科として標榜しているものを取り上げる。以下、各診療科ごとに簡単にみていく。
 
7 筆者の判断で8つの区分に含めなかった医師は、臨床研修医が16,701人、全科・その他・不詳の医師が6,327人。
1内科・皮膚科は、60歳前後の男性医師が中心
医師数がもっとも多い内科・皮膚科は、診療所勤務の60歳前後の男性医師が多いものとみられる。
2外科は、50歳前後の医師が中心で、男性医師の割合が高い
手術の執刀医を務めることもある外科は、50歳前後の男性医師が中心で、女性割合は低い。
3眼科・耳鼻咽喉科は、男女の各年齢層に幅広く分布
眼科・耳鼻咽喉科は、医師が特定の性別・年齢層に集中しておらず幅広く分布している。
4小児科は、30歳・40歳前後で女性医師の割合が高い
小児科は、40歳前後にピークがあり、30歳・40歳前後では女性医師の割合が高い。
5産科・婦人科は、30歳・40歳前後で半数以上が女性医師
産科・婦人科は、30歳・40歳前後で女性医師割合が50%超であり、若手女性医師の活躍が目立つ。
6精神科・心療内科は、50歳前後の男性医師が中心
精神療法を行う精神科・心療内科は、主に50歳前後の男性が中心的に活躍している。
7麻酔科・リハビリテーション科・放射線科等は、40歳前後が中心で、若手女性医師の割合が高い
麻酔科・リハビリテーション科・放射線科等は、若手の医師が多く、この年齢層で女性割合が高い。
8救急科は、40歳前後の医師が中心で、男性医師の割合が高い
救急医療を担う救急科は、若手の医師が多く、男性割合が高い。

6――おわりに (私見)

6――おわりに (私見)

本稿では、図表をもとに、日本の医師の分布構造をみていった。人口の高齢化が進むとともに、新たな医療技術の進展が図られる中で、医療の体制をどのように整備するかは重要なカギとなる。特に、今後増加する70歳代以降の高齢の医師には、内科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、精神科、心療内科などの診療所で総合診療医として、地域医療の中心的な役割を担ってもらうことが期待される。

医師の分布構造は、毎年の新卒医師の育成を通じて徐々にしか変化していかない。たとえば、今年大学を卒業する医師は、30年、40年先の医療体制をかたち作ることとなる。そのため、その体制づくりにおいては、長期的視点を持って、医師の配置を考えていくことが不可欠となる。

今後の医療政策の議論や、医師の育成の動向などに、引き続き注意していくこととしたい。
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