秋は、さまざまなスポーツが盛り上がる季節だ。毎週末、野球やサッカーをはじめ、たくさんの競技で熱戦が繰り広げられている。大勢の観客は、選手たちの鮮やかなプレーに大いにわく。
このうち、サッカーの試合観戦に花を添えているのがスポーツくじだ。スポーツくじには、いくつかの種類があるが、大きく分けると、コンピュータがランダムに試合結果を選択するBIGと、くじを買う人が試合結果を予想するtotoがある。宝くじと同じように、単純にくじとして楽しみたいという人にはBIG、対戦する両チームの戦力分析をしたり、過去の対戦成績をみたりしながら、試合結果の予想を楽しみたいという人にはtotoが、オススメとなる。
それでは、BIGやtotoで当せんの確率を上げたいと思ったらどうすればよいだろうか。スポーツくじの当せん確率について、すこし考えてみることにしたい。なお、あらかじめお断りしておくが、筆者はスポーツ評論家ではなく、サッカーについて一般的な知識しかもっていない。したがって、特定のチームの戦力や、チーム間の対戦成績などをもとに、専門的な予想を述べることはできない。あくまで、統計的な確率だけを頼りに、考えていくことにする。
まず、くじの仕組みを確認しておこう。BIGには、いくつかの種類がある。代表的なものでは、指定された14試合の90分間の試合結果が、くじの対象となる。1つの試合には、ホームチームの「勝ち」「負け」「その他(引き分け・延長)」の3通りの結果がありうる。14試合すべてについて、コンピュータの選択した結果が、実際の試合結果と一致した場合、1等当せんとなる。1口は300円で、1等はキャリーオーバーがない場合は最高3億円。キャリーオーバーがある場合は最高6億円となる。
これまで「ボーナスBIG」と呼ばれる特別開催回では、キャリーオーバーがない場合は最高7億円、キャリーオーバーがある場合は最高10億円となっていた。2019年度に、キャリーオーバーがある場合の上限が引き上げられて、最高12億円のくじが2回程度販売されることとなった。また、それとは別に、キャリーオーバーの有無にかかわらず最高7億円のくじが4回程度販売されることとなった。
一方、totoにもいくつかの種類がある。「勝ち」や「負け」ではなく、各チームのゴール数を予想するtoto GOALというくじもある。ここでは、代表的なtotoをみていこう。指定された13試合の90分間の試合結果が、くじの対象となる。13試合すべてについて、くじを買う人が予想した結果が、実際の試合結果と一致した場合、1等当せんとなる。totoは、1口100円で、1等はキャリーオーバーがない場合最高1億円。キャリーオーバーがある場合は、最高5億円となる。
なお、BIGもtotoも、当せん金は売上金額や当せん口数によって変動するので、注意が必要だ。
それでは、BIGやtotoのスポーツくじが、宝くじと異なる点はどこにあるだろうか。それは、1枚のくじの当せん確率が必ずしも同じではないというところだろう。宝くじならば何組の何番であろうと、当せんの確率は変わらない。どの番号のくじでも、当せんの確率は同じだ。しかし、スポーツくじの場合、対象となるサッカーの試合で、「勝ち」「負け」「引き分け」の結果が均等に出るとは限らない。BIGならコンピュータの選択に応じて、totoなら買う人の予想しだいで、それぞれのくじの当せん確率に違いが出ると考えられるのだ。
それでは実際に、サッカーの「勝ち」「負け」「引き分け」は、どの程度の割合で出現しているのだろうか。2018年のJ1のリーグ戦の結果をみてみよう。全306試合のうち、ホームチームの「勝ち」が128試合。「負け」が109試合。「引き分け」が69試合であった。つまり「勝ち」「負け」「引き分け」の割合は、それぞれ41.8%、35.6%、22.5%であった。ホームアドバンテージの存在が、結果に表れる形となっている (Jリーグのデータサイトに掲載されている試合結果を、筆者が集計)。
そこで、ホームアドバンテージが存在して、各試合でホームチームの「勝ち」「負け」「引き分け」となる確率は、この割合のとおり、41.8%、35.6%、22.5%であると仮定してみよう。この仮定だけをもとにした場合、当せん確率が一番高くなるのはどういうくじだろうか。
これは当然、全試合ホームチームの「勝ち」のくじだ。1等当せん確率は、BIGで0.0005%、totoで0.0012%となる。逆に、当せん確率が一番低いのは、全試合「引き分け」のくじだ。1等当せん確率は、BIGで0.00000009%、totoで0.00000039%となる。全試合ホームチームの「勝ち」のくじと比べると、1等当せん確率はそれぞれ1万分の2、1万分の3に減少してしまう。
しかし、ここまで読まれた読者は、かなり違和感を感じているかもしれない。たとえば、「すべてホームチームの『勝ち』のくじなんて、当たらないのでは ?」、「てきとうに、『負け』や『引き分け』が混ざっていたくじのほうが、当たりそうな気がするけど…。」といった感じだ。
「勝ち」「負け」「引き分け」の試合数がどういう内訳のくじが当たりやすいか、ということでいえば、この違和感は正しい。
実際に、BIGで試合数のパターンごとに1等当せんの確率を計算してみると、つぎのようになる。BIGでは、対象の14試合のうち、「勝ち」「負け」「引き分け」の試合数が6、5、3のケースが、1等当せん確率が5.9%となって、最も高いパターンとなる。