中村 亮一()
研究領域:保険
研究・専門分野
4.ソルベンシーIIの3年間
欧州の監督制度であるソルベンシーIIは、計画通りにレビューされ、現在も継続されている(25ページの情報ボックス「ソルベンシーIIのレビュー」を参照)。BaFinは、2016年初頭に発効してから3年後、ソルベンシーIIによる進歩は、その限定的な影響を上回ると考えている。批評家は、報告義務を果たすには多大な労力が必要であるとか、小規模の保険会社は不利な立場に置かれていると主張している。
保険年金基金監督CED(Chief Executive Director)のFrank Grund博士は、次のようにコメントしている。「私は、ソルベンシー財務状況報告書(SFCR)、定期的監督報告(RSR)及びリスクとソルベンシーの自己評価(ORSA)から発生する報告義務の全体は、保険会社に、活動の重要な要素である顧客、ガバナンスシステム及びリスクプロファイルを詳しく調べることを強制している、というポジティブなことを述べることで批判に応えたい。」
包括的批判
規制が非比例的であるという非難さえあまりに一般的だ、とGrund氏は述べた。ソルベンシーIIによって会社が有する課題を分析するには、差別化されたアプローチが必要だった。 背景は、ソルベンシーIIが特定の臨界値に達する保険会社にのみ適用されることである。さらに、二重比例の原則は、規制と監督実務におけるその適用が、会社のリスクの性質、規模及び複雑さを考慮しなければならないことを意味している。監督下の会社においても、規制要件を満たすために必要な労力と会社のリスクプロファイルとの間に合理的なバランスが必要だ。
欧州市場のメリット
Grund氏は、欧州市場向けのソルベンシーIIが達成したことは、保険会社のリスク管理システムが強化され、そのようなシステムの要件が欧州全体で標準化されたことだと考えている。しかし、彼は全てが完璧ではないことを認めた。例えば、一部の報告要件では、規模を簡素化及び縮小することでメリットが得られる。
彼はまた、金利リスクを再評価すべきであるというSCRレビュー中にEIOPAが欧州委員会に行った勧告への支持を表明した(25ページの情報ボックス「2020レビュー」を参照)。現在の標準式はマイナスの利子率を認識していなかったため、現実モデルと内部モデルの両方とは関係がなくなった。例えば、立法者が、ソルベンシーIIレビューを、持続可能性プロジェクトを促進するためのインセンティブとして長期契約の資本救済を導入する機会として使用する場合、適切なリスク管理が究極のベンチマークであり続けることを、監督の観点から確保する必要がある。
一目で
ソルベンシーIIレビュー
2018年に開始されたソルベンシーIIのレビューの一環として、欧州委員会は、ソルベンシーIIの実施規定を含む委任規制の改訂版を発表した。これに関連して、欧州委員会は、欧州保険年金監督局(EIOPA)による金利リスクに関する勧告を採用しなかった。金利リスクは現在、2020年の一般的なレビュー(2020レビュー)プロセスの対象となっている。BaFinは、金利リスクを更新することが緊急に必要であると考え続けているため、EIOPAの提案を支持している。委任規則の改訂版では、様々なリスク要因の再調整が規定されている。BaFinは、カウンターパーティのデフォルトリスクなどの個々のリスクモジュールの簡素化も想定していることを歓迎している。欧州委員会は、2019年3月8日に欧州委員会と欧州議会に修正委任規則を提出した。その後、後者は3か月の期間に反対する権利を有している。
2020年のレビュー
欧州委員会が2020年以降に検討しなければならないソルベンシーIIの構成要素には、標準式に基づいてソルベンシー資本要件(SCR)を計算する際に使用される、長期保証と株式リスクに対する措置、方法、仮定、標準パラメータ、そして最小資本要件(MCR)を計算するための規則及び監督当局の慣行が含まれる。さらに、グループの監督とグループ内の投資管理を強化する利点についても調査中である。欧州委員会はEIOPAに対応する助言を求めている。