実際に、2008年と2017年に日本で開催された国際会議について三大都市圏と地方部に分けて比較すると
6、開催件数の伸び率(年平均)は三大都市圏が4.9%、地方部が5.8%であり、外国人参加者数の伸び率(年平均)は三大都市圏が5.3%、地方部が7.7%であった(図表4)。いずれも地方部の伸び率が三大都市圏よりも高くなっている。さらに、三大都市圏と地方部の伸び率の差をみると、外国人参加者の伸び率の差が開催件数の差よりも大きくなっており、地方部では国際会議への外国人の参加率が三大都市圏以上に上昇していることがわかる。
地方部へのさらなるMICE誘致に向けては、官民が一体となって密に協調する体制の強化が求められる。観光庁などの機関が資金面等の取り組みを強化するだけではなく、地元の協力やモチベーションアップが欠かせない。地元の再活性化を目指した商店街の協力を得て国際学会の開催に繋げた福岡市は、まさに官民一体となってMICE誘致に取り組んだ模範である
7。このような成功モデルを例に挙げて、観光庁はMICE誘致のメリットを広く普及させ、地域の企業や個人等の民間を後押しすることが重要だ。
2019年のG20関係閣僚会合は、大阪サミットを除けば、8つのうち7つが地方部での開催である。閣僚会合の開催地について、政府は「地方創生の観点から声をあげた地区を中心に選定」(菅義偉官房長官)したとしている。地方開催には、日本の地方部の魅力を世界に発信するだけでなく、地方部の民間に対して今後のMICE誘致への契機につなげたい想いも含まれている。
また、カジノの可及的速やかなオープンはMICEの誘致に直結するため、誘致強化の役割を担っているテーマである。特定複合観光施設区域整備法(IR整備法)が2018年7月に可決されたが、この法案の指すIR(Integrated Resort:複合リゾート)とは、カジノの他ホテルやショッピング施設だけでなく、国際会議場や展示場などのMICE関連施設も含まれている。
つまり、日本でのカジノの開始はすなわち新しい大型MICE施設の誕生を意味している。カジノの集客力による効果もあり、MICEの開催件数および訪日外国人数は増加することが確実視される。さらに、カジノの誕生によるナイトライフの充実で、一人当たりの消費額は一層増加することが見込まれる。長くカジノでの賭博行為が禁止されていた日本にとっては、今後の観光産業を盛り上げるための格好の起爆剤となる。
「我が国のMICE国際競争力の強化に向けて(提言)」では、MICE関連の訪日外国人消費額の目標として、2020年に3,000億円、2030年に8,000億円と設定されている。2016年の実績から目標達成へ必要な伸び率(年平均)は、それぞれ18.9%、12.7%であり、これは全体の訪日外国人消費額が政府目標の達成に必要な伸び率とあまり変わらない。今後は、観光目的よりもビジネス目的の訪日外国人の拡大が重要になることを考えると、MICE関連の訪日外国人消費額はこれ以上のペースで伸びる余地があるだろう。政府目標に向けて、MICEが大きなカギを握っているといえる。
5 三大都市圏とは、埼玉、東京、千葉、神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫の8都府県。それ以外の39道県を地方部とした
6 日本政府観光局(JNTO)「国際会議統計」より
7 筒井義信とチームみらい「未来がみえた!10人のメンバーがみた地域初「チーム力」」(2016年)