3|主要な改正項目
最終案での修正内容を含めた、今回の主要な改正項目とそれらの影響は、概略以下の通りである。
(1) 長期株式投資
欧州委員会は、利害関係者からの、長期株式投資の取扱の適用基準、特に最低平均保有期間12年と、さらに12年間保有する能力を実証するための要件の組み合わせが厳しすぎるとの意見を踏まえて、長期株式投資の基準を変更した。
新しい規則の下では、最低平均保有期間は、12年から5年に短縮される。さらに会社は12年間ではなく、10年間ストレス状態においても投資を保持する能力を示せばよいことになる。ただし、資産は保険債務とマッチングさせる必要があり、それぞれが保険会社の貸借対照表の合計額の半分を超えてはならない。
保険会社の株式投資がこれらの基準を満たす場合、それらは22%の資本費用の対象となり、過去3年間に実施されてきたOECD諸国の上場株式に対する39%の資本費用からは大幅に削減されることとなる。
(2) 非上場株式
高品質の非上場株式投資のポートフォリオは、規制市場に上場されている株式と同じ扱い、すなわち49%から39%への資本費用の削減の恩恵を受けることができるようになる。
これによりプライベート・エクイティへの投資が促進されることになる。
(3) 未格付債務に対する内部モデルの使用
保険会社は、他の保険会社又は銀行の承認された内部モデルのアウトプットを使用して、未格付債務に対する資本費用を計算することができる。このような動きは、保険会社が中小企業向け融資の主要な源泉である私募に投資するのに役立つことになる。
欧州委員会は、未評価債務の内部モデルの使用に関する共同投資基準の臨界値のレベルについて50%という基準を設定していた。すなわち、内部モデルを使用している会社が投資の少なくとも50%を保有している場合にのみ使用できた。これに対して、このレベルが非現実的に高いとの意見が寄せられた。基準によると、保険会社は、他の保険会社又は銀行の承認された内部モデルのアウトプットを、その保険会社又は銀行が最低臨界値に等しい投資の留保を保持している場合にのみ使用できる。
欧州委員会は、実用性と利益相反の可能性に対処する必要性とのバランスをとるために、臨界値のレベルを50%から20%に引き下げた。
委任規則に対するその他の改正は、企業が自らの格付けを未格付債務に適用することをより容易にし、それは上記の変更に加えて、民間債への投資を促進することになる。
(4) 繰延税金の損失吸収能力(LAC DT)の計算に関する規定の適用日の延期
改正委任規則は、EU全体にわたるアプローチを調和させ、将来の利益に関して過度に楽観的な前提を置くことを制限することを目的として、繰延税金の損失吸収能力(LAC DT)の計算に関する新しい要件を導入している。
ただし、利害関係者からの反対意見を踏まえ、それらが保険会社に課す追加負担を考慮して、欧州委員会は、それらの規定の適用日を2020年1月1日に延期した。
(5) 信用及び保証保険会社の適用日の延期
改正委任規則は、信用及び保証ラインに対する保険料リスクの較正を変更して、ほぼ50%増加させる。ただし、信用及び保証セグメントでのみ活動している(再)保険会社の場合の損害保険料リスクに対する資本要件の増加を考慮して、新しい較正の適用日を2020年1月1日に設定することとした。
なお、この変更により、信用及び保証保険会社の一部ではSCR比率が10%~20%ポイント程度低下することになる。
3―ソルベンシーII委任規則改正最終案の具体的内容