【アジア・新興国】韓国の生命保険市場の現状-2018年のデータを中心に-

2019年01月08日

(金 明中) 社会保障全般・財源

4――資産運用

2018年第2四半期の韓国の生命保険会社の資産総額は841.2兆ウォン(前年同期の813.2兆ウォンに比べて3.4%増)で、その内一般勘定資産は694.3兆ウォン(前年同期の669.4兆ウォンに比べて3.7%増)であった(図表7)。そして、一般勘定資産の利回りは3.82%(対前年同期比0.25%ポイント上昇)に達した(運用資産の利回りは4.10%、非運用資産の利回りは-2.47%、図表8)。

一般勘定資産は、運用資産が96.2%、非運用資産が3.8%を占めており、運用資産の内訳をみると、有価証券が73.5%で最も高い割合を占めており、次いで貸出債権(19.0%)、不動産(1.9%)、現金と預金(1.8%)の順であった。

5――販売チャネル

5――販売チャネル

生命保険の販売チャネルの推移を初回保険料を基準としてみてみると、過去には保険外交員による販売が多かったものの、バンカシュアランスが登場してからは保険外交員のシェアは低下傾向にある。2001年に60.3%であった保険外交員のシェアは2018年第2四半期には9.0%まで低下している。>最近保険外交員のシェアが大きく低下している理由としては、文在寅政府が個人事業主の身分である保険外交員の会社職員化を推進していることや、保険外交員の多くが安定的な収入を求めて大型の保険代理店(GA:General Agency)に移動したこと等が考えられる。一方、会社職員のシェアは37.8%で前年同期と比べて18.0%ポイントも上昇した(図表9)。

6――結びに代えて

6――結びに代えて

韓国は、2017年から生産年齢人口が減少し、高齢社会(2018年の高齢化率14.3%7)に突入しており、今後生命保険市場は縮小傾向が続くと予想されている。韓国における生命保険会社の商品ポートフォリオ8を分析した調査結果(ユンソンフン・ハンソンウォン、2018)によると、企業規模が類似であれば、商品ポートフォリオも類似であることが分かった。つまり、生命保険会社ごとに競争力がある主力商品が明確ではなく、ほぼ似ている商品が販売されている。人口高齢化や生産年齢人口の減少に供えて、今後は競争力のある多様な商品開発にこれまで以上に力を入れる必要があるだろう。
 
7 韓国統計庁「KOSIS国家統計ポータル」ホームページ
8 企業が手掛けている商品の一覧(組み合わせ)

参考文献
日本語  
韓国語
  • 保険研究院(2017)「2017年保険消費者アンケート調査」
  • 保険研究院(2018)「2018年保険消費者アンケート調査」
  • 保険研究院「保険動向」各号
  • ユンソンフン・ハンソンウォン(2018)「国内生命保険市場の縮小と対応戦略」

生活研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

金 明中(きむ みょんじゅん)

研究領域:社会保障制度

研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計

経歴

プロフィール
【職歴】
独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職

・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
・2021年~ 専修大学非常勤講師
・2021年~ 日本大学非常勤講師
・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
・2024年~ 関東学院大学非常勤講師

・2019年  労働政策研究会議準備委員会準備委員
       東アジア経済経営学会理事
・2021年  第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員

【加入団体等】
・日本経済学会
・日本労務学会
・社会政策学会
・日本労使関係研究協会
・東アジア経済経営学会
・現代韓国朝鮮学会
・韓国人事管理学会
・博士(慶應義塾大学、商学)

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