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最近の人民元と今後の展開(2018年12月号)-米中金利逆転と絶対的割安の間で落ち着きどころを探る展開
2018年12月04日
(三尾 幸吉郎)
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11月の人民元レート(対米ドル、基準値、中国外貨取引センター)は小反発し、前月末比0.4%上昇の1米ドル=6.9357元で取引を終えた。また、日本円に対する人民元レートは、日本円が米ドルに対して下落したため、前月末比0.6%の元高・円安で取引を終えた。
19年3月末に向けての人民元レートは、米中の金利逆転が視野に入る中で当面は軟調な地合いとなりそうだ。ただし、購買力平価(PPP)で見た人民元の割安に焦点が当たれば、「現代版プラザ合意」のようなことが起きて人民元が上昇する可能性もあるため、乱高下に備えて想定レンジは広めに設定した(想定レンジは1米ドル=6.3~7.2元、1元=15.8~17.5円)。
1――11月の人民元の動き
11月の人民元レート(対米ドル、基準値、中国外貨取引センター)は小反発し、前月末比0.4%上昇の1米ドル=6.9357元で取引を終えた。これまでの流れを簡単に振り返ると、15年8月の人民元ショック以降、中国では資金流出懸念が高まり、人民元は16年12月に1米ドル=6.9710まで下落した。しかし、17年5月に中国政府が基準値設定方法を変更したことやユーロが上昇に転じたことなどから、18年春には人民元ショック前水準(同6.2元)近くまで値を戻すこととなった。その後、中国経済が減速し始めると米金利上昇に伴う米中金利差縮小が嫌気されて下落に転じた。18年8月に中国政府が基準値設定方法を再び厳しくすると一旦は下げ止まったものの、米金利上昇を背景とした米ドル高の地合いに大きな変化は見られず、人民元は下値を探る動きとなっている(図表-1)。なお、日本円に対する人民元レートは、日本円が米ドルに対して下落したため、100日本円=6.12645元(1元=16.32円)と前月末比0.6%の元高・円安で取引を終えた(図表-2)。
2――今後の展開
さて、19年3月末に向けての人民元レートは、米中の金利逆転が視野に入る中で当面は軟調な地合いとなりそうである。ただし、購買力平価(PPP)で見た人民元の割安に焦点が当たれば、「現代版プラザ合意」のようなことが起きて人民元が上昇する可能性もあるため、乱高下に備えて想定レンジは広めに設定した(想定レンジは1米ドル=6.3~7.2元、1元=15.8~17.5円)。
まず、米中の経済環境を概観すると、米国の景気はやや過熱気味であり、追加利上げを実施しても、米国経済はそれを吸収するだけの力強さがある。一方、景気が減速しつつある中国では、米国に追随して利上げできる状況ではない。中国政府は景気下支えに動き出しており、昨年12月と今年3月の米利上げに際して中国は、リバースレポ(7日物)を引き上げたが、6月と9月の米利上げでは追随を見送った。したがって、今回の予測期間中(19年3月末まで)には、米国の追加利上げで米中の金利逆転が視野に入るため、人民元は軟調な地合いとなりそうだ(図表-3)。
一方、米中両国は12月1日の首脳会談で、米国が19年1月1日に発動する予定だった追加関税(2000億ドル相当の製品に対する関税を10%から25%に引き上げる)を90日猶予した上で、中国は米国から農産物、エネルギー、工業製品などの購入を増やして貿易不均衡の是正を図るとともに、中国の構造的問題(技術移転の強要、知的財産権の保護、非関税障壁の是正、サイバー攻撃の停止、サービスと農業分野の市場開放)の解決に関する議論を進めることとなった。
"新冷戦"突入の瀬戸際にあった米中両国が、貿易戦争を一時停止し、共存共栄の道を探り始めた点は評価できるだろう。しかし、米中貿易不均衡の是正という点では力不足だろう。貿易不均衡が生じた背景には、前述の関税や構造的問題に加えて、"米国の過剰消費"と"中国の過剰生産"という基本的な経済構造があるからだ
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。そして、その背後には購買力平価(PPP)で見た人民元の割安がある。市場に委ねられた為替レートは金利差で動く傾向を持つため、米中の金利逆転が視野に入る中では、人民元はさらに下落する恐れがある。現下のこうした環境は、1985年のプラザ合意前に、米国の貿易赤字が拡大していたにも拘らず、高金利を背景に米ドル高が進んだ局面を思い起こさせる(図表-4)。今後本格化する米中通商交渉の過程では、「現代版プラザ合意」のようなことが起きて人民元が上昇する可能性にも、一定の留意が必要と考えている。
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米中貿易不均衡の根本的な原因に関しては「
図表でみる世界経済(米中関係編)~米中貿易戦争はどうなるのか?
」基礎研レター2018-10-19を参照
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