どうなる?日銀の物価集中点検~その注目点と影響について

2018年07月06日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

3.金融市場(6月)の振り返りと当面の予想

(10年国債利回り)
6月の動き 月初0.0%台前半でスタートし、月末も0.0%台前半に。     
月初、日銀のオペ減額や好調な米経済指標を受けた米金利上昇の波及から、4日に0.0%台半ばへとやや上昇。その後、難航が予想されていたG7サミットへの警戒から8日に0.0%台前半へと低下したが、米欧金融政策決定会合での引き締め観測を受けて、12日には再び0.0%台半ばへ戻る。一方、14日には米中貿易摩擦への警戒で安全資産の債券が買われ、0.0%台前半へと低下。その後もECBによる低金利政策の長期継続方針発表や日銀の物価判断引き下げを受けて金利に抑制圧力がかかり続け、月末にかけて0.0%台前半での推移が続いた。

当面の予想
今月に入っても米中貿易摩擦への警戒が強い状況が続き、安全資産としての国債需要が根強いことから、足元も0.0%台前半で推移している。今後も米国を中心とする貿易摩擦が短期で収束する可能性は低く、市場では警戒感の強い状況が続くことが見込まれる。また、ヘッジコスト上昇の影響で米国債投資が難しくなっているため、消去法的な日本国債需要も続きそうだ。従って、当面の長期金利は0.0%台前半から半ばでの低位での推移が予想される。
(ドル円レート)
6月の動き 月初109円台前半でスタートし、月末は110円台半ばに。
月初109円台前半でスタートした後、好調な米経済指標発表やイタリア政治に対する警戒感の緩和を受けて円安ドル高に振れ、7日には一時110円を回復。その後は一旦109円台へ下落したが、12日には米朝首脳会談で朝鮮半島非核化に向けて前進するとの期待から110円台前半へと上昇。以降はしばらく110円台での推移が継続したが、25日には「米政権が中国からの投資を制限する方針」との報道を受けて貿易摩擦への警戒が高まったことでリスク回避の円買いが入り、109円台に半ばへ下落。月の終盤は、貿易摩擦への警戒がやや緩和し、110円台半ばで終了した。

当面の予想
今月に入り、貿易摩擦への警戒がリスク回避的な円買い需要を発生させる一方で、米経済指標改善に伴うドル買い需要も根強く、ドル円は膠着した推移に。本日、米政権が対中制裁関税を発動したが、そのこと自体は織り込み済みであったため、大きな反応は出ておらず、足元は110円台後半で推移している。今後は米中貿易摩擦の動向が最大の焦点になる。本日夜に公表される米雇用統計も注目される。雇用統計は堅調な結果となり、ドルの下支えとなることが予想されるものの、米中貿易摩擦は今のところ両者の歩み寄り姿勢がみられず、短期での収束は見込みづらい。事態がエスカレートする可能性もあり、ドル円は円高リスクの高い時間帯が続くだろう。
(ユーロドルレート)
6月の動き 月初1.16ドル台後半からスタートし、月末は1.16ドル台後半に。
月の上旬は、ECBによる金融政策正常化観測からユーロが買われ、7日には1.18ドル台前半へと上昇した。一方、翌8日には独経済指標の不振な結果を受けて1.17ドル台半ばへと下落し、以後しばらく1.17ドル台での推移に。その後14日のECB理事会にて、政策金利を長期にわたって据え置く方針が示されたことでユーロが急落し、19日には1.15ドル台前半に。下旬に入ると、それまで大きく下落した反動や予想を上回る一部ユーロ圏の経済指標を受けてユーロが持ち直し、25日には1.17ドルを回復。月終盤には、EU首脳会議で難民・移民問題が紛糾するとの警戒からユーロが1.15ドル台まで売られたが、合意に至ったことで買い戻され、1.16ドル台後半で終了した。

当面の予想
ドイツでの連立与党の移民政策合意や経済指標改善から、足元も1.16ドル台後半で堅調に推移している。今後も欧州の政治・経済動向、米経済動向がユーロドルの材料となるが、先月、ECBが政策金利の長期据え置き方針を示した直後だけに、当面ユーロの上値は重いだろう。米国を中心とする貿易摩擦への警戒がユーロドルに与える影響はまちまちだが、貿易摩擦の影響で、ただでさえ陰りの見えるユーロ経済が圧迫されるとの見方に繋がれば、ユーロ安圧力になる。
 
 

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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