1|VII.金利リスク
(1)CPで検討されていたアプローチとその概要
EIOPAは、マイナス金利を伴う低利回り環境下で金利リスクを測定するには、現行の相対的アプローチは不適切であるとして、以下の3つの潜在的アプローチを分析していた。
1.シフトアプローチ
2.静的なフロア付きの最小ショックアプローチ
3.組み合わせアプローチ
現行の相対的アプローチと上記の3つのアプローチの概要は、以下の通りである。
0.相対的アプローチ(relative approach)
シフトは現在の金利の割合で計算される。ただし、上方のシフトには1%の下限があるが。下方のシフトに下限はない。さらにマイナスの金利は下方にストレスをかけない。
算式で表すと、上方へのシフトをr
𝑡𝑢𝑝、下方へのシフトを𝑟
𝑡𝑑𝑜𝑤𝑛で表すと、以下の通りとなる。
r
𝑡𝑢𝑝=max {𝑟
𝑡 (1+𝑠
𝑢𝑝),𝑟
𝑡+1%}
𝑟
𝑡𝑑𝑜𝑤𝑛=min {𝑟
𝑡(1−𝑠
𝑑𝑜𝑤𝑛),𝑟
𝑡}
1.シフトアプローチ(Shifted approach)
第1ステップで、現在の金利が上方にシフトされるように機能する。第2ステップでは、このシフトされたスポットレートに基づいて、相対的なストレスが実行される。最後に、相対的にストレスが与えられシフトされたスポットレートは、同じ初期シフト量だけ下方にシフトされる。
𝑟
𝑡𝑢𝑝 =(𝑟
𝑡 − 𝜃) ×(1 +𝑠
𝑠ℎ𝑖𝑓𝑡,𝑢𝑝(𝜃) )+ 𝜃
𝑟
𝑡𝑑𝑜𝑤𝑛 =(𝑟
𝑡 − 𝜃) ×(1−𝑠
𝑠ℎ𝑖𝑓𝑡,𝑑𝑜𝑤𝑛(𝜃)) + 𝜃
ここに、𝜃は潜在的に満期に依存するシフトベクトルで、𝑠
𝑠ℎ𝑖𝑓𝑡,𝑢𝑝(𝜃)と𝑠
𝑠ℎ𝑖𝑓𝑡,𝑑𝑜𝑤𝑛(𝜃)は相対的なストレスファクターであり、それ自体がシフトベクトル𝜃に依存する。
2.静的なフロア付きの最小ショックアプローチ(A symmetric 200 basis point (bps) minimum shock with a static interest rate floor)
基本的には200bpsの最小ショックを与えつつ、フロアレートも設定する形で、期間mに応じて、以下の通りに設定される。
𝑟
𝑡𝑑𝑜𝑤𝑛,𝑚𝑖𝑛𝑠ℎ𝑜𝑐𝑘 = max (𝑓𝑙𝑜𝑜𝑟(𝑚),min [𝑟
𝑡(𝑚) − 2% ; 𝑟
𝑡(𝑚) ×(1 − 𝑠
𝑑𝑜𝑤𝑛(𝑚))])
𝑟
𝑡𝑢𝑝,𝑚𝑖𝑛𝑠ℎ𝑜𝑐𝑘 = max [𝑟
𝑡(𝑚) + 2% ; 𝑟
𝑡(𝑚) × (1 + 𝑠
𝑢𝑝(𝑚))]
ここで、絶対的な最小ショックは、20年目以降、90年で0%に達するまで、直線的に減少する。また、上方の200bpsの最小ショックを維持しつつ、フロア付きで設定されるが、フロアとしての最低金利は、満期1年で-2%、20年以上の満期で-1%、満期1年から20年の間は直線補間で設定される。
3.組み合わせアプローチ(A combined approach)
低利回り環境下では、擬似ストレス(affine stress)が適用され、中程度の利回り環境下では、パラレルな200bpsのストレスが適用される。一方、高利回り環境下では純粋に相対的なストレスが優先される。
擬似ストレスは以下の通りに設定される。
𝑟
𝑡𝑑𝑜𝑤𝑛,𝑎𝑓𝑓𝑖𝑛𝑒(𝑚) = min (𝑟
𝑡(𝑚), 𝑟
𝑡(𝑚) (1− 𝑠
𝑑𝑜𝑤𝑛(𝑚))) − 1%
𝑟
𝑡𝑢𝑝,𝑎𝑓𝑓𝑖𝑛𝑒(𝑚) = max (𝑟(𝑚), 𝑟
𝑡(𝑚)(1 + 𝑠
𝑢𝑝(𝑚))) + 1.4%
ここで、非対称的な追加的なストレス要素である-1%と+1.4%については、20年目以降、90年で0%に達するまで、直線的に減少する。
組み合わせショックは、この擬似ストレスと「2.静的なフロア付きの最小ショックアプローチ」との大小関係チェック(下方は小さい方、上方は大きい方)を行って設定される。
𝑟
𝑡𝑑𝑜𝑤𝑛,𝑐𝑜𝑚𝑏𝑖𝑛𝑒𝑑(𝑚) = max (𝑟
𝑡𝑑𝑜𝑤𝑛,𝑎𝑓𝑓𝑖𝑛𝑒(𝑚) ; 𝑟
𝑡𝑑𝑜𝑤𝑛,𝑚𝑖𝑛𝑠ℎ𝑜𝑐𝑘(𝑚))
𝑟
𝑡𝑢𝑝,𝑐𝑜𝑚𝑏𝑖𝑛𝑒𝑑(𝑚) = min (𝑟
𝑡𝑢𝑝,𝑎𝑓𝑓𝑖𝑛𝑒(𝑚) ; 𝑟
𝑡𝑢𝑝,𝑚𝑖𝑛𝑠ℎ𝑜𝑐𝑘(𝑚))
下の図(CPより抜粋)は、この組み合わせアプローチがどのようにワークするのかを示している(x軸は金利、y軸は絶対ショック)。