ドル安の賞味期限はいつまで?~マーケット・カルテ3月号

2018年02月21日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

ドル円は2月前半に大幅な円高ドル安が進み、16日には105円台を付けた。その後はドルがやや買い戻されているが、足元でも107円台後半と110円を大きく割り込むドル安水準に留まっている。これまでドル安が進んだ理由としては、ユーロやポンドなど今後金融緩和終了・利上げが見込まれる通貨が現れ、利上げ通貨としてのドルの相対的な魅力が低減するなかで、米金利上昇に伴う株式市場の動揺でリスク回避的な円買いが発生したほか、米国の財政・インフレ懸念、保護主義・ドル安志向への警戒が台頭したことが挙げられる。この結果、米金利上昇が進んだにもかかわらずドル安が進行することとなった。

当面はドルの上値が重く、円高に警戒が必要な時間帯が続きそうだが、次第に市場が落ち着くことで、日米のファンダメンタルズに沿った円安ドル高が再開するだろう。高金利を求めて国内投資家のドル買いが動き出すこともドル高要因になる。3ヵ月後の水準は111円程度と予想している。

ユーロ円も今月に入ってリスク回避的な円買いを受けてユーロ安が進み、足元は132円台後半にある。当面は不安定な展開が予想されるが、ECBの緩和縮小が日銀よりも先行することは疑いがない。市場が落ち着いていくにつれてECBの緩和縮小が意識され、ユーロ高圧力が高まるだろう。ユーロ円の3ヵ月後の水準は135円程度と予想している。

長期金利は、月初に米金利上昇の波及によって0.1%に肉薄したが、日銀による指し値オペ実施や株安に伴う国債需要の高まりを受けて低下、足元は0.06%付近で推移している。日銀の早期緩和縮小観測も副総裁へのリフレ派指名などを受けてやや後退している。今後も米金利の先高感が長期金利の下支えとなる一方で、日銀は早期緩和縮小観測を打ち消すためにも金利抑制スタンスを当面崩さないだろう。従って、3ヵ月後の金利水準は現状比で横ばい圏内と予想している。
 
(執筆時点:2018/2/21)

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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