統合後の経営については、以下の展開が見込まれる。
- より消費者サイドのヘルスケアサービスの充実
- データと分析力の強化
- ヘルスケアコスト削減への貢献
1|より消費者サイドに立つヘルスケアサービスの充実
両社は、「CVSヘルスのローカルプレゼンスと臨床能力、エトナのヘルスケア給付・サービスを組み合わせ」、「より高度に統合されたヘルスケアを提供し、よりよく情報に基づいた意思決定を行えるよう、消費者およびその医療プロフェッショナルに権限を与える」ことを統合後のビジネスとして考えている。そのため、「現在のヘルスケアシステムでは満たされていないニーズを満たし、コミュニティ、家庭、デジタルツール、そのいずれかを問わず、より低コストで高品質なケアへのアクセスを再定義する」としている。全米9,700の薬局、1,100のミニ診療所、双方が持つ雇用主(を通じた従業員)市場ルート、エトナが持つ病院、医師ネットワーク等が結びつくことにより、「製薬会社」と「病院」を除く、より消費者に近いヘルスケアサービスを取り揃えたビジネスモデルができあがることとなる。末端の消費者である患者や医療費の支払い者との接点(タッチポイント)も多くなる。
考えられている一つの方向は、ドラッグストアを、顧客に身近で医療を受けられる場として利用することである。ミニット・クリニックを活用し、ドラッグストアにウェルネススペースを設置し、薬剤師、看護師、療法士、栄養士等、専門スタッフを配置する。この手頃な医療提供にエトナは保険の側面から貢献することになる。
2|データ分析能力の強化
エトナは、不正防止と医療分野におけるコンプライアンス、長期的な症状の管理を目的に、アナリティクス(分析)、ML(機械学習)、AI(人口知能)を使いこなすデジタル部門を抱えているという。CVS
ヘルスも処方箋薬業務、小売店業務でさまざまなデータを持っている。
統合会社は今後、これらの巨大なデータの分析、活用に取り組み、今後の進化したパーソナライズドメディスン(個別化医療)や患者フォローアップの推進に役立てることを所期している。
3|そして、ヘルスケアコスト削減への貢献
以上見てきたように、統合会社は、医療費コストを抑えることが利益に結び付く事業特性を持っている。CVSヘルスとエトナは、サービスを充実させるとともにパーソナライゼーションを推進し、例えば以下のような対応を行うことで、医療費コストの削減に貢献することができるとしている。
基本的には、ミニット・クリニックを充実し、ミニット・クリニックでの対応で病状が管理でき、患者が病院に行かないですむようにできれば、医療費コストの縮減に貢献できることになる。
【貢献例1 慢性糖尿病患者の管理を通じた貢献】
米国の糖尿病患者は3000万人で、ヘルスケアシステムに年間2,450億ドルの負担となっている。
統合会社は、店舗に設けたヘルスハブでの対面カウンセリングと血糖値など重要な指標の遠隔モニタリングを通じて、慢性糖尿病患者にケアを提供するとしている。患者は、血糖値が正常範囲から逸脱した場合、それを知らせる通知メッセージを受け取る。また患者は投薬に関するカウンセリングを受け、糖尿病関連の消耗品を買い、減量に関するカウンセリングや栄養学に基づくプログラムなどの付随サービスを受けることができる。これらを通じ、患者は血糖値をより良くコントロールすることができ、健康状態を改善することができる。
【貢献例2 不必要な再入院の抑止によるコスト削減】
メディケア患者の20%は、退院した直後に再入院し、これがかなりの年間コストとなっている。
しかし、退院した患者が、必要に応じて、身近なドラッグストアのヘルスハブで、投薬評価、在宅モニタリング、耐久医療機器の使用などのサービスにアクセスできれば、喪失感や混乱を感じることもなくなる。また退院した後の投薬状況の完全なレビューを作成し患者が自宅でケアを管理することを助ける。さらに、家庭用デバイスで、活動レベル、脈拍、呼吸数をモニターし、異常があれば即対応することにより再入院を防止する。
さいごに