日銀短観(12月調査)予測~大企業製造業の業況判断D.I.は1ポイント上昇の23と予想

2017年12月07日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

■要旨
  1. 12月調査短観では、大企業製造業で小幅ながら5四半期連続の景況感改善が示されると予想する。大企業非製造業もわずかに改善すると見込んでいる。前回9月調査以降の景気も総じて見れば堅調を維持しているとみられる。大企業製造業では主に世界経済の回復を背景とした輸出・生産の堅調な推移を受けて、景況感の小幅な改善が見込まれる。為替相場も安定した推移を示している。大企業非製造業では、個人消費の伸び悩みが抑制要因になるが、好調なインバウンド消費、大都市圏での再開発・五輪を控えた建設需要等が追い風となる。中小企業については、製造業が小幅に改善する一方、非製造業は弱含むと予想。非製造業では人手不足問題が深刻化しており、景況感の抑制に作用しているとみられる。
     
  2. 先行きの景況感は幅広く悪化が示されると予想。引き続き、世界経済を巡る懸念材料は枚挙に暇がない。米国第一主義を貫く米政権運営の不透明感、北朝鮮情勢の緊迫化、党大会を終えた中国の経済減速等だ。国内に関しても、賃金が伸び悩む一方で物価の上昇が続いており、消費への警戒感が台頭しそうだ。企業は先行きへの慎重な見方を崩しそうにない。
     
  3. 2017年度の設備投資計画(全規模)は、前年比5.9%増へ上方修正されると予想。例年12月調査では中小企業を中心に上方修正される傾向が強い。企業の投資余力は十分であること、人手不足を受けて一部で省力化投資が活発化していることから、実勢としても堅調と言える計画になりそうだ。ただし、収益改善の割にはやや物足りない水準に留まる。
     
  4. 今回の注目点は、雇用人員判断D.I.と販売価格判断D.I.の関係だ。人手不足感は強まっているが企業は省力化投資等でのコスト吸収を優先しているとみられ、価格転嫁による販売価格引き上げの動きは限定的に留まっている。これまで同様の傾向が続くのか、それとも価格転嫁の動きが活発化する兆しがうかがわれるのか、物価を見通すうえで注目される。
■目次

12月短観予測:企業の景況感は堅調維持だが、先行きは慎重姿勢崩さず
  ・大企業製造業は小幅改善・非製造業は横ばいと予想
  ・注目ポイント:人手不足感と値上げ意欲の関係
  ・日銀金融政策への影響は限定的

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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