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景気ウォッチャー調査(17年8月)~現状は天候要因が下押し、先行きは堅調~
2017年09月11日
(白波瀨 康雄)
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3.景気の先行き判断DI(季節調整値):3ヵ月連続で節目となる50を上回る。
先行き判断DI(季節調整値)は51.1(前月差+0.8ポイント)と2ヵ月ぶりに改善した。先行きの景況感は2017年度に入り持ち直しており、3ヵ月連続で節目となる50の水準を上回っている。先行き判断DIの内訳をみると、雇用関連(前月差▲2.6ポイント)が大きく悪化したが、家計動向関連(同+1.3ポイント)、企業動向関連(同+0.9ポイント)は改善した。家計動向関連は節目となる50を6ヵ月ぶりに上回り、これで家計・企業・雇用関連の全分野が50に達した。
家計動向関連
では、「インバウンド売上の増加が続くことで、12月ごろまでは店の売上も増収が期待できる。また、国内の富裕層である外商顧客の売上も前年を上回っており、この2~3か月は好調が続く見通しである」(近畿・百貨店)など引き続きインバウンド需要に期待するコメントがみられた。一方で、「資材や材料の価格が上がり続けている。天候も不安定で夏以降の野菜の価格高騰も懸念される。また、じわじわと物の値上がりが続くなかで、消費者の給料が上がるわけでもないことから、生活が苦しくなり、消費もますます落ち込むことが懸念される。景気が上向くような材料は1つもないため、今後も変わらないまま推移する」(北海道・高級レストラン)など、物価が上昇していく中、消費者が節約志向を強めることを懸念するコメントがみられた。
企業動向関連
では、「受注量、販売量はある程度確保しているが、原材料が値上がりしても製品価格への転嫁がかなり難しく、収益面で苦戦する」(東海・パルプ・紙・紙加工品製造業)など、売上の増加は見込めるが、収益を確保するのは厳しいとするコメントがみられた。一方で、「スクラップ価格が高騰しているが、それに伴い販売価格も改善してきており、今後も価格は上昇する見込みである。建築物件のみならず土木物件も動き出し受注量も回復してきた」(九州・鉄鋼業)など、売上増加に伴って収益を上げている企業もみられる。
雇用関連
では、「求職者の減少傾向が続いていることから人手不足感が一層強まっており、少しでも応募者を増やしたいと、業種を問わず契約社員から正社員に切替えて募集する企業が目立つ」(中国・職業安定所)など、人材を確保するため募集条件を見直す企業もみられるが、「求職者が減少しており、既存取引先への求人に対するマッチングが滞っている状況が続いているため、追加求人案件が減少傾向にある。新たに派遣活用を行う企業も一部出てきているが、全体的な求人数の減少は否めない。求人数が減少すると、新規登録者も集まりにくくなるため、悪循環となってしまう傾向があり、景気が悪くなる可能性が高い」(南関東・人材派遣会社)など、求人要件と求職者の希望がマッチングせず、求人をあきらめる企業も現れているようだ。
景況感は2017年度に入り、企業関連や雇用関連が牽引して持ち直しの動きがみられる。企業の受注は好調を維持しており、人手不足が深刻化するなか人材確保に向けて求人条件を見直すなど雇用所得環境の改善が一段と期待できる。家計関連についても、天候要因に左右される展開が続いているが、先行きについては着実に改善してきている。
2017年度に入り、北朝鮮情勢が緊迫化しているが、これまで景況感の大きな下押し材料にはならなかった。しかし、8月末に北朝鮮が発射した弾道ミサイルが日本上空を通過するなど、ここにきて情勢は一段と緊迫化している。金融市場にも不安定な動きがみられ、今後景況感にも影響が出る可能性があろう。
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白波瀨 康雄
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