中村 亮一()
研究領域:保険
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E.4.3内部モデルと標準式
内部モデルと標準式によるSCR計算の間の主要な差異は、以下を含んでいる。
・標準式のストレスと相関が規定されているのに対して、ソルベンシーII指令によって要求される内部モデルテストと基準に従うことを条件に、内部モデルのリスクシナリオは、Prudential固有のリスクプロファイルを反映し、データ分析と専門家判断の組み合わせから導き出される(詳細は下表参照)。
・同じ幅広いリスクカテゴリが内部モデルのリスクドライバをグループ化するために使用されるが、各カテゴリ内の内部モデルリスクドライバは、通常、標準式で考慮される広範なリスクカテゴリよりもはるかにきめ細かである。例えば、標準式のストレスの多くは国によって異ならないが、内部モデルのリスクドライバは、通常、国やその他のリスクの属性によって異なる。
・内部モデルは、標準式に含まれていないいくつかのリスク(例えば、株式インプライドボラティリティリスク、金利インプライドボラティリティリスク、国債スプレッドリスク)もカバーしている。
・内部モデルSCRは、基礎となるリスクドライバを総合的なストレス・シナリオにまとめ、99.5%のワーストパーセンタイル結果を導出するために、これらのストレス・シナリオをグループの貸借対照表に適用した結果をランク付けすることによって導き出される。逆に、標準式SCRは、所定の各ストレスの貸借対照表への影響を別々に計算し、次にこれらの結果を所定の相関行列を用いて集計することによって導き出される。したがって、内部モデルでは、一緒に発生するリスクの組み合わせの貸借対照表への影響を許容するが、標準式では、個々のリスクを個別に考慮するのみである。そして
・内部モデルでは、対応する負債の価値の変動を反映して、各リスクシナリオでマッチング調整リングフェンスを変更することができる。したがって、内部のリスクとマッチング調整ポートフォリオ外のリスクの分散は認められる。逆に、標準式は一緒に発生するリスクの組み合わせによる影響を考慮していないため、内部のリスクとマッチング調整ポートフォリオ外のリスクとの間での分散化は認識しないことが求められる。
3―グループと単体の内部モデルの差異
E.2 ソルベンシー資本要件(SCR)と最低資本要件(MCR)
個々の事業レベルで使用された内部モデルと、グループのソルベンシー資本要件の計算に使用された内部モデルとの主な違い
AXA Insurance UK plcでは、英国の監督当局である健全性規制機構(PRA)の要件に起因して、グループ統合に使用される内部モデルとローカルで使用される内部モデルの間に、2つの主な違いが存在している。なお、英国の保険会社は、(PRAの要件のため)ボラティリティ調整よりもマッチング調整の使用を好んでいる:
■市場リスクに関する内部モデルには、ソロSCRとグループSCRへのローカル寄与の両方に対するSCRの計算におけるボラティリティ調整の将来の変化を予測する「動的ボラティリティ調整」のモデル化が含まれる。しかし、PRAの立場は、英国はSCRの算出におけるボラティリティ調整の水準を変更してはならないということである。その結果、AXA Insurance UK plcの市場リスクモデリングには、ソロSCRの計算における動的ボラティリティ調整の利益を取り除くための調整が含まれている。
■PRAは、厳しい財政状況において年金基金の負債をより慎重にモデル化することを要求した。IAS第19号によれば、年金負債は社債のスプレッド・カーブで割り引かれている。保守性な理由から、(グループSCRへの英国寄与分の25%ではなく)AXA Insurance UK plc及びAXA PPP healthcare LtdのソロSCR計算の社債スプレッドの動きに対して、50%のヘアカットが適用される。
個々の事業レベルで使用される内部モデルとAXAグループのSCRの計算に使用される内部モデルとの間には、他の違いはない。
E.4.3.内部モデルで使用された方法
法人レベルでのSCRの計算には異なるアプローチが適用される
グループPIM(部分内部モデル)は、PIM範囲内の会社のSCRの計算のためにも、グループ・レベルでのSCRの計算の両方に対しても、承認されている。 この目的のために、ローカル適合性評価は、モデリングと較正が範囲内の会社に対しても適切なままであることを認めている。 ローカルに特定の較正に関しては、イタリアの会社については、グループ・レベル及び他のPIM事業体の計算とは異なって、イタリア政府債務へのストレスや確率論的ボラティリティ調整は適用されないことに留意されたい。
4―まとめ