ゼロ%台前半からゼロ%台後半に上振れした日本の潜在成長率

2017年07月14日

(斎藤 太郎) 日本経済

2016年8月に「日本の潜在成長率は本当にゼロ%台前半なのか」を執筆した当時、日本の潜在成長率はゼロ%台前半まで低下しているというのがコンセンサスだった。しかし、潜在成長率はあくまでも推計値で、実績値の改定や先行きの成長率によって過去に遡って改定されることも少なくない。筆者は当時の潜在成長率は日本経済の実力を過小評価しており、このことが日本経済に対する悲観論の一因にもなっているとの問題意識を持っていた。

潜在成長率を推計する上で最も重要な統計であるGDP統計は、2016年12月に基準改定(2005年基準→2011年基準)と最新の国際基準への対応(1993SNA→2008SNA)が実施され、過去の成長率が上方改定された。筆者はGDP統計の改定結果が公表されてから約1週間後に潜在成長率の再推計を行い、「GDP統計の改定で1%近くまで高まった日本の潜在成長率」を執筆した。

その後、内閣府(2017年1月)、日本銀行(2017年4月)から新しいGDP統計に基づく潜在成長率の推計値が公表され、いずれもゼロ%台前半からゼロ%台後半へと上方改定された(下図参照)。もちろん、統計の改定によって日本経済の実力が変わったわけではない。また、現在の潜在成長率の水準も将来にわたって不変というわけではない。ただ、潜在成長率が上振れしたことで日本経済に対する見方は以前よりも明るくなったように思われる。
■目次

「日本の潜在成長率は本当にゼロ%台前半なのか」
 1――はじめに
 2――潜在成長率を巡る問題
  1|潜在成長率、GDPギャップの推移
  2|潜在GDPの推計方法
  3|潜在成長率の寄与度分解
  4|改定される潜在成長率
 3――潜在成長率の先行き試算
 4――おわりに

「GDP統計の改定で1%近くまで高まった日本の潜在成長率
 -ゼロ%台前半を前提にした悲観論は間違いだった?」


※本稿は2016年8月31日「基礎研レポート」、2016年12月14日「研究員の眼」を転載したものである。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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