日銀短観(6月調査)~景況感は幅広く改善、先行きは慎重さが残る

2017年07月03日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

■要旨
 
  1. 日銀短観6月調査では、注目度の高い大企業製造業の業況判断D.I.が17と前回3月調査比で5ポイント上昇し、3四半期連続で景況感の改善が示された。大企業非製造業の業況判断D.I.も23と前回比3ポイント上昇し、2四半期連続の改善となった。製造業では良好な輸出環境や為替の安定、消費の持ち直しを受けた生産回復により景況感が改善した。非製造業も消費の持ち直しが景況感の改善に繋がったほか、大都市圏での再開発事業や五輪需要等が建設領域の支援材料になった。中小企業も大企業同様、製造業・非製造業ともに改善が示された。
     
  2. 先行きについては、慎重な見方が示された。引き続き海外情勢の不透明感が根強いことが影響したとみられるほか、国内に関しても、人手不足に加え、今後物価の上昇が予想されることから、消費等に悪影響が出る懸念が台頭したとみられる。
     
  3. 2016年度の設備投資実績は、前年度比0.4%増と前回調査時点から横ばいとなった。実績の伸び率としては2011年度以来の低水準となった。昨年度は、欧米政治の混乱や上期の円高進行などから事業環境の不透明感が強まり、様子見姿勢が広がったためとみられる。2017年度の設備投資計画は、2016年度実績比で2.9%増と前回調査時点の1.3%減から上方修正された。例年6月調査では、計画が固まってくることで上方修正される傾向が極めて強い。今回は、近年の同時期との比較で高めの伸び率となったが、伸び率の土台となる16年度の実績が低いことがプラスに働いている面もある。従って、実勢としては底堅いものの、未だ力強さには欠けるとの評価が妥当だろう。企業収益の改善は設備投資の追い風ながら、海外情勢をめぐる不透明感が強い状況が続いており、現段階において投資を大きく積極化する動きは限られている模様。

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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