米国経済の見通し-米経済は消費主導の底堅い景気回復持続を予想も、無視できない国内政治リスク

2017年06月09日

(窪谷 浩) 米国経済

■要旨
  1. 米国の1-3月期成長率(前期比年率)は、+1.2%(前期:+2.1%)と前期から伸びが鈍化。季節調整の影響に加え、天候要因などにより個人消費が低調となったことが要因。
     
  2. トランプ政権発足から4ヵ月が経過したものの、政策運営はスムーズに進んでいない。予算編成や税制改革のスケジュールが大幅に遅れているほか、オバマケアなどの重要政策で議会共和党との政策協調も不透明となっている。このため、政策期待を背景に高水準を維持している消費者や企業センチメントは、期待剥落から悪化する可能性。
     
  3. 米経済は、労働市場の回復基調が持続する中、個人消費を取り巻く環境は引き続き消費に追い風となっており、個人消費主導の景気回復が期待できる。さらに、これまで低調であった設備投資の回復が明確となってきたこともポジティブな要因である。
     
  4. 今後の米国経済動向は、引き続きトランプ政権の経済政策に左右される。当研究所ではこれまでの予想通り、政策遂行の遅れから経済政策による成長率押上げは17年の成長率の押上げはほぼゼロ、18年も0.3%程度と予想している。この結果、成長率(前年比)は17年が+2.2%、18年は+2.5%となろう。
     
  5. 金融政策は、6月、9月に追加利上げが実施された後、12月にバランスシート縮小に着手すると予想する。長期金利は17年末に2%台後半、18年末に3%台前半を予想する。
     
  6. 米国経済に対するリスク要因は、米国内の政治リスクに加え、地政学リスクの高まりなどを背景に資本市場が不安定化することが挙げられる。
■目次

1.経済概況・見通し
  ・(経済概況)1‐3月期の成長率は前期から伸びが鈍化
  ・(経済見通し)成長率は17年+2.2%、18年+2.4%を予想
2.実体経済の動向
  ・(個人消費)雇用不安が後退する中、個人消費を取り巻く環境は良好
  ・(設備投資)設備投資の回復が明確
  ・(住宅投資)回復ペースは鈍化も住宅市場の回復は持続
  ・(政府支出、財政収支)予算および税制改革の大統領案提示も先行きは依然不透明
  ・(貿易)6月に発表される不公正貿易に関する報告書に注目
3.物価・金融政策・長期金利の動向
  ・(物価)エネルギー価格が物価を押し上げ
  ・(金融政策)年内6月、9月の追加利上げ。12月のバランスシート縮小開始を予想。
  ・(長期金利)18年末にかけて緩やかな上昇を予想

経済研究部   主任研究員

窪谷 浩(くぼたに ひろし)

研究領域:経済

研究・専門分野
米国経済

経歴

【職歴】
 1991年 日本生命保険相互会社入社
 1999年 NLI International Inc.(米国)
 2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
 2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
 2014年10月より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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